2022 Fiscal Year Research-status Report
性の生理メカニズムと環境応答進化を統合する数理的研究
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19K06838
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
山口 幸 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (20709191)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性表現多様性 / 至近要因 / 生理的機構 / 有性生殖 / 無性生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
多様な動物の性分化や性決定に関する内分泌学・生理学・分子生物学的な機構が急速に明らかになってきている。他方でその究極要因については、環境が適応度に与える影響の性差に注目した研究がなされてきた。本研究では、遺伝子ネットワークや発生的・生理的メカニズムを考慮したモデルの上に、自然淘汰や性淘汰が働くとき、どのような形質や環境応答が進化するかを探索するのが目的である。今年度は、主に2つのテーマに取り組んだ。 (1)共同研究者の巌佐庸氏(九州大学名誉教授)がProceedings of The Royal Society BからThe annual Darwin reviewへの招待を受けて、山口と巌佐がこれまで発表してきた共著論文の内容およびそれに関連する研究を紹介した。「海洋動物の多様な性表現の理論的研究」というタイトルで、多様な性システムを理解するためのゲーム理論を使用した研究をまとめ、このような手法は一般的なパターンを理解するのに重要であるが、特定のケースに向けたモデルの改良には制約を支配する至近要因を考慮する必要があり、そのためには生理学的、エピジェネティクス、分子分析から得られる情報が必要であると主張した (Iwasa & Yamaguchi, 2023)。 (2)ワムシとミジンコでは好適な環境条件下では無性生殖が行われ、効率よく増殖する。しかし、生育に不敵な環境が予測されると有性個体が出現し、それらが交尾して耐久卵を算出する。生殖の切り替えが起こる条件について、bed-hedging理論に基づくモデルの解析を進めているが、計算上困難な部分の解決には至らなかった。しかし、研究会「生物リズム若手研究者の集い2022」に参加し、ミジンコの性決定に関する実験的研究についての情報を収集することができたため、今後はそれを用いたモデルの改良を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度までに科研費課題として行ってきた研究は、レビュー論文で国際誌Proceedings of The Royal Society B に掲載された(Iwasa & Yamaguchi 2023)。また第27回日本生態学会宮地賞の受賞にもつながった。しかし研究実績の概要における(2)については、解析を終えることができなかった。また2022年度実施予定だった研究を順調に進めることができなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度実施できなかった研究計画を2023年度実施する。 (1)無性生殖と有性生殖の切り替え 大部分のミジンコ種において、幼若ホルモンを作用させると雄が産出されること、またワムシにおいても幼若ホルモンが有性生殖を引き起こすことが、近年確認されている。そこで、幼若ホルモンの生産や分解のダイナミックスを考え、それらを制御する酵素と環境シグナルを考慮した力学系モデルを展開し、雄が出現する条件を明らかにする。 また、2022年に参加した研究会「生物リズム若手研究者の集い2022」において、ミジンコの性決定に関する実験的研究についての情報を収集することができたため、今後はそれを考慮したモデルの改良を進める予定である。 (2)遺伝性決定と環境性決定 脊椎動物の性決定や性分化には多数の遺伝子の関与とともに、性ホルモンが極めて重要な役割を果たすことがわかっている。各アレルが温度依存性の異なる酵素をコードし、産卵時点における温度に基づいて反応することで性が決定されるとき、与えられた環境に応じて、異なるアレルが雌雄を決める遺伝性決定と、同一のアレルが温度によって雌雄を変える環境性決定のいずれが進化するかを計算する。基本的に遺伝性決定であるが、高温で生育すると遺伝的性が変化する(温度依存性決定が実現する)フトアゴヒゲトカゲやメダカなどを対象にして、数理モデルを展開する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症拡大防止により、共同研究者との打ち合わせ出張がキャンセルになり、また国内学会は基本的にzoomでのオンライン開催となったため。 次年度は原著論文をオープンアクセスにする。また共同研究者との打ち合わせ出張を多数実施する予定である。
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Remarks |
第27回日本生態学会宮地賞 受賞(2023年3月21日)
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Research Products
(5 results)