2021 Fiscal Year Research-status Report
ライバル雄の妨害がドライブするシオマネキ類の配偶者選択におけるシグナル系の複雑化
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19K06857
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
竹下 文雄 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (00723842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
逸見 泰久 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (40304985)
松政 正俊 岩手医科大学, 教養教育センター, 教授 (50219474)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハクセンシオマネキ / メスによる配偶者選択 / 妨害 / オス間競争 / 性淘汰 / 配偶者探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
熊本県上天草市小泊(低密度個体群)において、野外で配偶相手を探索するメスを追跡し、メスによる配偶相手の探索行動と、近隣オスの妨害によるメスの配偶の意思決定に関する追加調査を実施し、上天草市永浦島(高密度個体群)と比較した。 調査の結果、低密度個体群では、高密度個体群に比べ、配偶相手の探索時間に違いは見られなかったものの、訪問するオスの数は減少傾向にあった。ただし探索時間を共変量として訪問するオスの数を低密度個体群・高密度個体群で比較すると、個体群間で違いは検出されなかった。 また最終的にペアを形成したオスの巣穴上で生じた近隣オスによる妨害の頻度は、低密度個体群では高密度個体群よりも減少した。また低密度個体群では妨害が生じなかった場合でも、メスが巣穴から一時的に退出する頻度が増加した。この結果は、低密度個体群のメスはペアを形成するオスを訪問した時点においても配偶相手の選好性について相対的に高い閾値を維持していたことを示唆している。しかし、低密度個体群のメスは高い選好性の閾値を維持するものの、配偶相手候補者との遭遇機会が低いため、結果的に全体として訪問する配偶相手の数が減少するのかもしれない。一方、高密度個体群では、頻発するオスの妨害によりメスはなんらかのコストを受けて選好性の閾値を低下させたものの、妨害によるキャンセルにより、結果的に訪問するオス数が増加したのかもしれない。つまり本種では密度が増加によって、相対的にメスによる配偶者選択の淘汰圧が弱くなり、一方で近隣オスの妨害に起因したオス間競争の淘汰圧が強くなるといった性淘汰構造の変化が生じている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の調査が実施できなかった影響により、当初想定していたよりも計画が遅れている。そのため当該年度に実施予定だったシオマネキ類他種の種間比較のための調査を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍により依然として国外での調査に制限があるため、種間比較のために調査を予定していた種を国内の種に限定する。その代わりとしてハクセンシオマネキの個体群間比較に重点を起き、国内複数の個体群で形態等のデータを取得する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため一部調査が制限され、また学会参加のための旅費が未使用だったこともあり、特に旅費の使用額が低下したため。
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Research Products
(4 results)