2019 Fiscal Year Research-status Report
Ecological inference based on kinship assignment
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19K06862
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
秋田 鉄也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 研究員 (60625507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中道 礼一郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (70401255)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 家系分析 / 近親標識法 / 集団構造 / 有効集団サイズ / 不偏推定量 / 繁殖生態 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
興味ある生物種の集団構造や繁殖生態を解明する方法論を整備することは,基礎と応用の両面から非常に重要である.私たちはこれまでの一連の研究で,i) 近親関係は集団サイズや繁殖生態に関する情報を与えるが,ii) 親子・兄弟以外の近親関係を識別するには多くのDNAマーカーが必要であることを理論的に明らかにしてきた.本申請では,集団構造の推定精度・サンプル数・DNAマーカー数の間にトレードオフがある点に着目することで上記の成果を発展させ,1)複数の近親関係を同時に用いた集団構造の推定法の開発,2)より少ないDNAマーカー数から近親判別を実施するアルゴリズムの開発,3)1)および2)を応用して様々な状況に応じたサンプル数や予算規模のもとで集団構造を明らかにする理論的基盤を整備する.さらに,オープンデータを用いた実証研究を通じて,開発した理論体系の検証に取り組む。本年度は初年度であり,親子や兄弟といった検出しやすい近親関係に焦点を当てた解析や,近親判別アルゴリズムの精度向上に主に取り組んだ.前者については,サンプル内の半兄弟関係をもとに有効集団サイズの不偏推定量を導出する論文が,Heredity誌に受理された.また,親子関係と半兄弟関係を同時に用いて,有効集団サイズとセンサスサイズの比(Ne/N)を不偏推定する研究についても,現在国際誌に投稿中である.後者については,サポートベクターマシーンを用いたアルゴリズム開発が順調に進んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たに開発した有効集団サイズの不偏推定量は,既存の推定量よりもはるかにバイアスを小さくするため,資源評価や希少種保全での有用性が期待される.この推定量について記載した論文は,近親理論で有名なJinliang Wang博士によってHeredity誌のEditor's choice 2019に選ばれ,高く評価された.また,この結果に基づく理論の開発が予想以上の早さで進んでおり(1報投稿中,2報投稿準備中),当初の計画以上に進呈していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
繁殖成功度のバラツキについては,親子関係と半兄弟関係を組み合わせることで抽出に成功したので,今後は,より具体的な繁殖生態に関する情報を近親関係から推定する理論を開発する.その上で,より複雑な近親関係から集団構造や繁殖生態に関する情報を抽出する理論の開発や,その際に必要となる近親関係を検出するアルゴリズムの開発についても進める.複雑な近親関係を取り扱うには,シミュレーションベースの研究に対するエフォートを上げる必要があるため,より高性能なPC環境を整備する予定である.なお,申請時においては,海外研究者の招聘によるクローズドな議論やシンポジウム開催を想定していたが,新型コロナウイルスの影響により招聘が困難になっため,リモートでの議論を念頭において研究を進める.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,論文のオープンアクセス費用を計上したのが期末であり,その円ベースの額が為替変動のため確定しなかったためである.使用計画としては,理論の代数的な取り扱いに必須となる消耗品(ノート・ボールペン)の購入にあてる予定である.
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