2020 Fiscal Year Research-status Report
Ecological inference based on kinship assignment
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19K06862
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
秋田 鉄也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(横浜), 研究員 (60625507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中道 礼一郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(横浜), 主任研究員 (70401255)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 家系生態学 / 近親関係 / 有効集団サイズ / 不偏推定量 / 移動率推定 / 有効繁殖回数 / 個体数推定 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年目である本年度は、個体数推定だけでなく、移動や繁殖に関するパラメータ推定に近親関係を利用する解析に取り組んだ。移動個体数の推定は、生態学的にも資源学的にも非常に重要であるが、標識放流法は適用可能な状況が限られており、集団遺伝学的な方法は近年の解像度が皆無であり需要がある。親子関係や兄弟関係を用いた推定式を数学的に導出し、その有効性や満たすべき条件について確認した。また、近親関係と耳石から得られる誕生日の情報を使って、1シーズンあたりの繁殖回数を推定する方法も開発した。この推定値を有効繁殖回数と定義し集団間や種間で比較することで、生態学的な示唆を与える新しい理論を生み出しつつある。近親関係を高精度で推定する方法については、ランダムフォレストなど機械学習法を応用した手法を新たに開発し、シミュレーションにて既存の手法と比較した。その結果、新しい手法の方が良いパフォーマンスを示していると判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
移動と繁殖回数を推定する全く新しい理論をさせたためである。さらに、前年度から取り組んでいる有効集団サイズとセンサスサイズ比を不偏推定することを記載した論文が国際誌に受理されたが、有効集団サイズの権威であるWaples博士が、この論文の内容を全面に押し出したレビュー論文をプレプリントとして発表しており、近親関係に基づく生態学的な取り組み(=家系生態学)がより広まっていくことが確信できたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、個体数や有効集団サイズの推定のみならず、具体的な繁殖生態に関する情報を近親関係から推定する理論を開発してきた。最終年度である2021年度は、未発表内容を投稿論文としてまとめ出版することを目指す。同時に、集団中でかなりの割合で発見される、いとこ関係や叔父叔母関係を用いた理論についてもエフォートをあげ、サンプルデータのもつ情報を最大限に活用する推定理論の開発を探求する。さらに、既存のデータを利用した実証例についても数を増やしていく予定である。
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Causes of Carryover |
申請時においては、海外研究者の招聘によるクローズドな議論やシンポジウム開催を想定していたが、2020年度は新型コロナウイルスの影響により招聘が困難となった。この傾向は、2021年度も継続することを想定している。また、計算資源拡充のために高性能PCの購入を予定していたが、アルゴリズムの改良により、現状の計算資源でも十分対応できる実装に落ち着いた。以上より、旅費および高性能PC購入に見込んでいた予算を、論文オープンアクセス費用やリモートでの会合開催に充てる予定である。
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