2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of functional roles of two GABA synthetic enzyme isoforms using knockout rats
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19K06881
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柳川 右千夫 群馬大学, 大学院医学系研究科, 客員教授 (90202366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | GABA / グルタミン酸脱炭酸酵素 / GAD65 / GAD67 / ノックアウトラット |
Outline of Annual Research Achievements |
GABAは主要な神経伝達物質であり、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD; GAD65とGAD67の2型存在)によって合成される。GAD65とGAD67はそれぞれGad2とGad1の異なる遺伝子にコードされ、分子量、補酵素との親和性、細胞内局在などで違いがある。本研究において2種類のGad遺伝子についてそれぞれノックアウト(KO)ラットを作製し、表現型について同遺伝子のKOマウスと比較解析した結果、重症度が違うことを明らかにした。そこで、発達期におけるGAD65とGAD67の各分子の役割(特にGABA合成への貢献度)を明らかにするために、Gad1/Gad2ダブルヘテロラット(Gad1+/-; Gad2+/-ラット)同士を交配し、様々なGadノックアウトラットを作製し、表現型について比較解析した。 最初に、胎生期20日(E20)のGad1/Gad2ダブルKOラット脳について、抗GAD65/67抗体を用いたウエスタンブロットを行った結果、GAD65及びGAD67に相当するバンドが検出されず、両分子が欠損していることを確認した。次に、E20のKOラット前脳および網膜のGABA含量をHPLCで測定し、ゲノタイプ間で比較検討した。前脳のGABA含量では、野生型ラットを100%とすると、Gad1 KOラットで18%、Gad2 KOラットで71%、Gad1/Gad2ダブルKOラットで0.3%であった。網膜のGABA含量では、野生型ラットを100%とすると、Gad1 KOラットで38%、Gad2 KOラットで56%、Gad1/Gad2ダブルKOラットで2%であった。以上の結果は、E20の前脳及び網膜において、(1)GABAが2種類のGAD分子により合成されること、(2)GABA合成に関してGAD67がGAD65よりもドミナントであることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GABA合成経路には、グルタミン酸由来とプトレッシン由来の2経路の存在が知られている。ラット及びマウスの網膜におけるGABAは、GAD活性が極めて低値あるいは検出されない発達早期においても存在する。さらに、新生仔ラットの網膜を放射性標識したプトレッシンとインキュベーションした実験から、発達早期の網膜にあるGABAはプトレッシン由来と推測されていた。しかしながら、E20のGad1/Gad2ダブルノックアウト網膜のGABA含量が非常に低値だったことから殆どのGABAがGAD65或いはGAD67によって合成されることが明らかになった。また、前脳GABAにおいても網膜GABAと類似の結果から、同時期の前脳GABAはグルタミン酸由来でGADにより合成されると結論した。それから、Gad1/Gad2ダブルノックアウトラットは全例で出生日に死亡し、肺の病理学的検査で野生型ラットと比較し肺胞腔が狭くなっていることから、呼吸障害の死因が示唆された。これらのノックアウトラットの研究成果をまとめて論文として発表した(Jiang et al., FASEB J. 2022)。 Gad1ノックアウトラット、Gad2ノックアウトラット、Gad1/Gad2ダブルノックアウトラットについて表現型の解析を継続しているが、解析に必要なラットの匹数を得るのに当初の予定より時間がかかっている。それで、論文発表まで至っていない実験結果が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果として、Gad2ノックアウトラットは痙攣発作を示すてんかんモデル動物および不安様行動を示すモデル動物、Gad1ノックアウトラットは認知機能障害を示す統合失調症モデル動物として利用できる可能性を提示した。さらに本年度の研究成果から、Gad1/Gad2ダブルノックアウトラットが網膜や前脳におけるGABA欠損ラットとして利用できることを示した。 来年度は、これまでの研究成果をさらに継続発展させる。GAD1遺伝子の機能喪失変異を両アレルにもつヒトでは、統合失調症(Magri et al., Sci Rep. 2018)だけでなく、発達性およびてんかん性脳症(Chatron et al., Brain 2020; Neuray et al., Brain 2020)を発症することが報告されている。そこで、Gad1ノックアウトラットで類似な症状が出現するかどうか、検討する。また、大脳皮質の神経前駆細胞、神経細胞、グリア細胞の増殖や分化に対するGABAの影響を明らかにする目的で、GABAが欠損しているGad1/Gad2ダブルノックアウトラットと野生型ラットの比較解析を進める。これらのノックアウトラットの解析を継続することにより、脳機能におけるGAD65分子とGAD67分子の役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
(次年度使用が生じた理由)Gad1ノックアウトラット及びGad2ノックアウトラットの一部は、アダルトまで生存することを本研究で論文として発表した(Fujihara et al., Transl Psychiatry 2020; Kakizaki et al., FASEB J. 2021)。しかし、いずれのノックアウトラットも生存率が低く、多くは新生時期までに死亡する。従って、解析に使用する匹数を得るのに時間がかかり、当初の予定より遅れた。また、Gad1/Gad2ダブルノックアウトラットを得るには、Gad1/Gad2ダブルヘテロラット同士の交配が必要であるが、産仔の16分の1の確率でしか生まれてこない(Jiang et al., FASEB J. 2022)ので、更なる実験結果を得るのに時間がかかっている。 (使用計画)研究をより高度に遂行するために学会参加や論文作成に使用する。特に、論文作成に関して、英文校正費、論文掲載費、ラット飼育費など追加実験に関する経費に充てる。
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[Journal Article] Impact of GAD65 and/or GAD67 deficiency on perinatal development in rats2022
Author(s)
Jiang W, Kakizaki T, Fujihara K, Miyata S, Zhang Y, Suto T, Kato D, Saito S, Shibasaki K, Ishizaki Y, Isoda K, Yokoo H, Obinata H, Hirano T, Miyasaka Y, Mashimo T, Yanagawa Y.
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Journal Title
FASEB J.
Volume: 36
Pages: e22123
DOI
Peer Reviewed
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