2019 Fiscal Year Research-status Report
オキシトシン産生ニューロンの前頭前皮質への投射に関する機能解析
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19K06910
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
犬束 歩 自治医科大学, 医学部, 助教 (30584776)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オキシトシン受容体 / 前頭前皮質 / ウイルスベクター / オートラジオグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
視床下部に局在するオキシトシン産生ニューロンは、多様な脳領域に投射しており、機能的にも社会行動・摂食・ストレスといった多様な生理現象に関与している。現在、オキシトシンが社会行動に果たす役割が大きく注目を集めているが、オキシトシンのもたらす効果は生育暦や社会的文脈などの多彩な要因に修飾され、その実態が捉えづらい。本研究は、複雑な入出力を持つオキシトシン産生ニューロンの個別の投射経路を選択的に活動操作し、その機能分担/機能連関を明らかにする。申請者は、これまでの研究によって社会的敗北ストレスによるオキシトシン産生ニューロンの活性化を見出した。そこで、前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞がストレス応答において果たす役割について重点的に解析を行う。 2019年度の研究実績としては、オートラジオグラフィーを用いた前頭前皮質におけるオキシトシン受容体のコンディショナルKOの確認が挙げられる。これまでの研究において、Oxtr-floxedマウスの前頭前皮質にCre発現AAVベクターを局所投与することでオキシトシン受容体を前頭前皮質特異的に欠損させてその機能を調べる実験を行っていた。オキシトシン受容体はいくつかの報告はあるものの、抗体を用いて免疫染色で検出することが未だ困難なタンパク質である。そこで、脳内におけるオキシトシン受容体の分布を見るため、放射性同位体を用いたオートラジオグラフィーを行った。オートラジオグラフィーでは、対照群マウスの脳切片において前頭前皮質の深い領域にオキシトシン受容体の分布が確認された。このシグナルはCreを発現するAAVベクターを投与したマウスでは大幅に低下していた。こうした結果は、AAVベクターを利用したCreの発現により、前頭前皮質におけるオキシトシン受容体を選択的にノックアウトできたことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートラジオグラフィーを用いて、前頭前皮質におけるオキシトシン受容体のコンディショナルノックアウトを確認することができた。前頭前皮質におけるオキシトシン受容体のコンディショナルノックアウトマウスの行動解析は既に終了しており、これまでの進捗状況としては概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞が、どのようにして社会行動や摂食制御のような個別の機能を分担しているのか検討するためには、数時間にわたる行動実験の期間中、標的とする神経回路の活動を操作できる手法が必要となる。Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADDs)と呼ばれる改変型GPCRは、リガンド結合部位に変異を加えることで、本来のリガンドには応答しない一方、合成リガンドであるClozapine-N-oxide (CNO)によって活性化される。今後の研究の推進方策としては、新たに導入したOxtr-CreノックインマウスにCre依存的にDREADDsを発現させるAAVベクターを局所投与し、そのマウスにCNOを腹腔内投与することによって標的細胞を数時間にわたって駆動する。これまでの研究において、社会的敗北ストレスを与えると視床下部の室傍核および視索上核のオキシトシン産生ニューロンが強く活性化されることが分かっている。前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞を、社会的敗北ストレスを与える際にDREADDsにより活性化し、その後の摂食・代謝など生理学的応答や不安などを含む行動変容における効果を解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては2つ挙げられる。1つはアデノ随伴ウイルスベクターでも逆行性感染を達成できたことである。そのため、当初予定していた高額なイヌアデノウイルスベクターを海外から大量購入する必要がなくなった分、本申請が研究課題を発展的に継承する研究課題の研究費に予算の次年度持越しが生じた。2019年度のもう一つの理由としては、動物の維持管理や共通して使用する試薬購入に充てられる本課題以外の研究費の存在が挙げられる。アデノ随伴ウイルスベクターでも逆行性感染を達成できたことにより、ウイルスベクター自体を外部から購入する必要は低下した。しかしながら、作成できるウイルスベクターの拡張性が増加したことにより、実行可能となる動物実験のボリュームは増加する。次年度使用額は主に実験動物の購入・維持管理に充填する。
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Research Products
(4 results)