2019 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質ホスファターゼによる神経軸索の細胞骨格制御と側枝形成の分子機構の解明
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19K06923
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安村 美里 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20533897)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 皮質脊髄路 / 軸索側枝 / リン脂質ホスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は軸索の途中に側枝を形成し、複数の標的細胞とシナプスを形成する。これにより、神経細胞は複数の神経核に同時に信号を送ることができ、協調的な活動が可能となる。。タイムラプスイメージングによる動態解析から、細胞骨格がどのように変化することで側枝が形成されるかについては明らかとなっている。しかしながら、そのような軸索の細胞骨格の変化を側枝形成領域で引き起こす分子機構については、報告が非常に少ないため、依然として不明な点が多い。 申請者らは皮質脊髄路が橋核に伸ばす側枝をモデルに研究を進め、これまでにリン脂質ホスファターゼの1つが側枝形成に関与する可能性があることを見出している。本研究は、このリン脂質ホスファターゼに着目し、細胞外のリガンドや細胞内のシグナル経路を同定することで、側枝形成時の軸索の細胞骨格制御の分子機構を明らかにすることを目的としている。着目したリン脂質ホスファターゼは培養細胞に過剰発現させると、細胞体の周囲に多数の突起を形成させることが知られている。今年度は5つのファミリーメンバーそれぞれをHEK293T細胞に発現させ、突起形成能を定量し、今後解析を進めていくファミリーメンバーを絞り込んだ。また、橋核に伸ばす側枝が形成される時期に、このリン脂質ホスファターゼが大脳皮質第5b層の神経細胞に発現していることをin situ hybridization法とRT-PCR法で確認をした。さらにin utero electroporation法を用いて、大脳皮質第5b層の神経細胞でリン脂質ホスファターゼのノックダウンを行い、橋核への側枝形成に与える影響を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、5つのファミリーメンバーのうち、解析を進めていくメンバーを決定することができたため。計画ではCRISPR/Cas9法を用いて大脳皮質第5b層の神経細胞でリン脂質ホスファターゼをノックアウトし、側枝形成への影響を検討する予定であった。しかしながら、安定してノックアウトすることが難しかったため、shRNAを用いたノックダウンに変更したが、側枝形成に影響が出ることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、リン脂質ホスファターゼを大脳皮質第5b層の神経細胞でノックダウンした時の側枝形成への影響について解析を行う。今年度は橋核に伸ばす側枝の長さに関して解析を行なったが、今後は形成する側枝の数など違う指標についても解析を行う。また、皮質脊髄路が橋核以外の脳部位に伸ばす側枝の形成にもリン脂質ホスファターゼが関与しているかどうかの解析も進める。さらに、細胞骨格の変化を引き起こす細胞内のシグナル伝達経路の同定も行なっていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は下記の2点である。 1)3月末に開催される学会に参加予定であったが、誌上開催となり、旅費が必要なくなったため。 2)遺伝子改変マウスを作製することを検討していたが、所属研究科の動物施設の改修が決まり、収容可能な動物の数が少ない施設に移転しなくてはならなくなったため、新たに導入する動物の繁殖・飼育が困難となり、マウスの作製を次年度以降に延期することにしたため。
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Research Products
(4 results)