2021 Fiscal Year Research-status Report
成体における新生血管の成熟を決定する分子機構の解明と創薬応用
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19K07116
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
冨田 拓郎 (沼賀拓郎) 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60705060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管平滑筋 / 交感神経 / 電位依存性L型カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、成熟個体における血管成熟機構の解明が目的である。血管の成熟とは、内皮細胞により作られる脆弱な毛細血管が、血管平滑筋に被覆され、構造的な安定化を得るとともに、成長により有意に血管径を拡大させ機能的な血管を形成する最終段階のことを示す。しかしながら未だその制御機構は明らかにされていない。血管成熟の過程においては、血管平滑筋の表現型が、増殖型と呼ばれる増殖能・遊走能の高いものから、細胞周期から離脱し、収縮力を獲得した収縮型へ分化することが重要である。 本年度は、この血管平滑筋の分化を促進する因子の探索をすすめた。その過程で、成長段階にあるマウスに、ドパミンのアナログである6-Hydroxydopamine (6-OHDA)を投与することにより交感神経を除神経すると、心臓における血管平滑筋マーカーα-SMAの発現が顕著に低下することを発見した。この結果は、血管に並走する交感神経の投射が、血管平滑筋の分化と血管の成熟に寄与する因子の一つとなる可能性を示唆する。 また、血管平滑筋の表現型制御には、細胞膜電位が密接に関与している。最近我々の研究室では、電位依存性カルシウムチャネルCaV1.2のC末端にある1709番目のチロシンのリン酸化が、CaV1.2のチャネル活性を亢進することを明らかにし、それが血管平滑筋の遊走に重要であることを明らかにした。そこでCaV1.2のチロシンリン酸化部位を破壊したY1709F変異ノックインマウスを作製し、その表現型を解析した。全身性に各臓器の発達への影響を探索したが、大きな影響は見られなかった。そこで、血管平滑筋の表現型変化に影響が大きくでることを期待し、動脈硬化症の病態モデルを適用し、Y1709リン酸化の成体における重要性を解明しようとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織の成長にともなう血管形成において血管成熟は非常に重要である。しかしながら、どのような因子がそれを制御しているかは未だ明らかにされていない。本研究では、血管と並走して組織に投射する交感神経に着目しその血管成熟への影響を解析した。それにより交感神経の除神経が、血管成熟を抑制することを示唆するデータを得ることができた。また、交感神経の投射を制御するNGFの発現を血管平滑筋が制御していることから、交感神経・血管の相互作用の解析を現在精力的に進めている。 チロシンリン酸化の変異マウスの解析では、生理的な成長には大きな影響が認められなかった。しかしながら、病態モデルを適用した際のコントロールとして重要な結果が蓄積できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、心臓における機能的な血管網の形成に、交感神経の支配が重要であることが示唆された。交感神経がどのように血管平滑筋に影響するのかを今後明らかにする。交感神経終末から、ノルアドレナリンだけでなくATPや神経ペプチドYが放出される。そこでそれらを交感神経除神経マウスに投与し、除神経による血管成熟の抑制がレスキューされるかどうかを検証する。 心臓での交感神経の伸展には血管平滑筋からのNGF遊離が重要とされている。近年、NGFの前駆体ProNGFはangiogenesisに影響することが明らかにされている。すなわち、NGFを介した血管平滑筋と交感神経のクロストークも、血管の成熟に影響する可能性が高い。そこで、NGFを心臓内の各種細胞でノックアウトし、交感神経および冠血管の発達に与える影響を解析している。 Y1709F変異マウスに、動脈硬化の病態モデルとして頸動脈結紮モデルを適用し、血管平滑筋の新生内膜への遊走および増殖にY1709F変異が与える影響を明らかにする。それにより血管平滑筋における表現型の移行(収縮型から増殖型へ)へのY1709リン酸化の重要性を明らかにできる。
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Causes of Carryover |
NGFのノックアウトマウスや交感神経除神経マウスを用いた実験が継続中であり、その解析に用いる消耗品や試薬購入費として使用するため。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] NRSF-GNAO1 Pathway Contributes to the Regulation of Cardiac Ca2+ Homeostasis2022
Author(s)
Inazumi H, Kuwahara K, Nakagawa Y, Kuwabara Y, Numaga-Tomita T, Kashihara T, Nakada T, Kurebayashi N, Oya M, Nonaka M, Sugihara M, Kinoshita H, Moriuchi K, Yanagisawa H, Nishikimi T, Motoki H, Yamada M, Morimoto S, Otsu K, Mortensen RM, Nakao K, Kimura T
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Journal Title
Circulation Research
Volume: 130
Pages: 234~248
DOI
Peer Reviewed
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