2019 Fiscal Year Research-status Report
潜在的標的分子を指標としたターゲットマイニングによる化合物探索
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19K07136
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
佐藤 道大 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (10629695)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノムマイニング / 標的分子 / 糸状菌 / 二次代謝産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、未知の二次代謝産物生合成遺伝子クラスターに存在する潜在的標的分子を指標としたゲノムマイニングによる、効率的な化合物の獲得である。それと同時に、遺伝子クラスター中に存在する標的分子と考えられる遺伝子が、どのような活性を示すのかを明らかにすべく研究を行っている。本年度においては、後者の研究についてすすめた。具体的には、糸状菌Cladobotryum sp.から単離されたFR901483の生合成研究ならびにその遺伝子クラスターに存在する標的分子について、その活性を明らかにした。化合物FR901483は、生合成経路に関しては2つのチロシンから生合成されると予想されているものの、現在までに詳細な経路に関する報告例はない。 はじめにCladobotryum sp.の全ゲノム配列を解読した。RNA-seq解析を行い、クラスター中の各遺伝子のORFを特定した。推定遺伝子クラスターをclfクラスターとした。本クラスターに存在するCClf4 (NRPS) を大腸菌発現系を用いて組換えタンパク質として獲得した。本酵素をチロシンを基質としたin vitro反応に供したところ、チロシンの二量体環化生成物が得られた。また、キナーゼと相同性のあるClf1およびClf9を、FR901483脱リン酸体を基質としてin vitro反応に供したところClf9にリン酸化活性が認められた。これらのことから、clfクラスターがFR901483生合成遺伝子クラスターであることが強く示唆された(論文投稿中)。クラスター中に存在するclf2は標的分子と考えられ、その活性を調べるために、MBP結合タンパク質として獲得した。本酵素の活性を調べ、かつFR901483によりその活性が阻害されることを確認した(論文執筆中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で既述したように、FR901483の構造から予想される生合成経路を基に生合成に必要となる遺伝子を推定し、それら遺伝子を含むクラスターを1つ見出すことができた。さらに、精製酵素を用いた実験により、in vitroにおいてその反応を確認することに成功し、その生合成メカニズムについてまとめ、論文を執筆、現在投稿中である。また、その生合成遺伝子クラスター中に存在する推定標的分子についても、精製酵素として獲得に成功し、その活性を確認することができた。今後は引き続き、その標的分子について、FR901483との相互作用について解析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降については、現在行っているFR901483の標的分子についての解析および、標的分子を指標にした化合物生合成遺伝子クラスターの探索を行う。ロバスタチンやフマギリンはそれぞれHMG-CoA還元酵素およびメチオニンアミノペプチダーゼ2が標的分子として知られているが、それらの生合成遺伝子クラスターには、HMG-CoA還元酵素およびメチオニンアミノペプチダーゼ2と相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子が存在する。例えば、これらHMG-CoA還元酵素やMetAP2を指標にロバスタチンやフマギリンとは異なる生合成遺伝子クラスターを探索することで、これら両化合物とは骨格の異なる化合物が獲得できると考えられる。リソースとしては、植物内生菌や病原菌を用いる予定である。これらの真菌は、絶えず他種生物との接触があり、生存競争つまり二次代謝産物生産に長けていると考えられ、実際植物病原菌のChaetomium属などは、非常に多くの化合物を生産することで知られている。
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Research Products
(2 results)