2022 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウム依存性に起こる細胞内ホスファチジルセリンの分布変化
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19K07265
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
辻 琢磨 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (40725628)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホスファチジルセリン / 電子顕微鏡 / 凍結割断レプリカ法 / 膜脂質の非対称性分布 / 膜脂質の偏在性分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスファチジルセリン (PtdSer) は生体膜脂質二重層を構成する主要な負電荷リン脂質である。申請者は以前、PtdSer分布を詳細に解析する方法[急速凍結・凍結割断レプリカ標識電子顕微鏡(QF-FRL)法]を開発し、出芽酵母と哺乳類細胞のオルガネラ膜のPtdSer分布を、脂質二重層の両層それぞれで解析した。PtdSerに結合する蛍光PtdSerプローブを細胞質中に発現させる観察法では、出芽酵母の細胞内膜系や哺乳類細胞の小胞体にシグナルが得られていなかったが、QF-FRL法を用いることでこれらのオルガネラにおけるPtdSer分布を明らかにすることに成功した。 出芽酵母では液胞(哺乳類細胞のリソソームに相同する)やゴルジ体、細胞膜ではPtdSerは細胞質側に豊富で内腔側層に少ない、非対称性の分布であった。ATP合成を1時間阻害したところ、液胞膜のみ非対称性が崩壊し、内腔側のPtdSerが増加した。その後薬剤を洗い流し、30分後にPtdSer分布を調べたところ、液胞膜は再び非対称性分布であった。この結果はATPを消費して内腔側から細胞質側へPtdSerを輸送する機構が液胞膜上に存在することを示唆した。この分子実体を明らかにすべく、様々な遺伝子欠損株を解析したところ、ある小胞輸送関連遺伝子を欠損した細胞ではATP存在下ではPtdSer非対称性分布が維持されていたが、ATP枯渇時には野生型細胞よりも多くのPtdSerが内腔側に露出することがわかった。
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