2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K07282
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
竹田 有加里 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (20582159)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 洞房結節細胞 / Ca2+制御異常 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はマウス洞房結節細胞における自発的かつ局所的なCa放出LCRの記録に成功し、LCRの過剰な活性化が高血糖による不整脈発症に関与するとの知見を得た。本研究では高血糖によるLCR制御破綻を介する洞房結節由来の不整脈発症機序を定量的に解明することを目的とする。前年度は高グルコースの洞房結節細胞リズム形成に対する作用を検討するため、単離マウス洞房結節細胞の20 mMグルコース刺激を行った結果、収縮間隔が一過性に延長または短縮する変則的収縮が誘発された。本年度はグルコース刺激が洞房結節由来の不整脈発症に関与するか否か、臓器レベルで検討するため、ランゲンドルフ灌流心に20 mMグルコースを灌流した。その結果、これまでに報告されている心室性の期外収縮とは別に、R-R間隔が一過性に延長または短縮する変則的リズムが誘発され、血糖グルコース濃度の上昇が洞房結節由来の不整脈発症に関与することを見いだした。前年度にはまた、ミトコンドリアの空間分布とLCRの発生部位との位置関係を検討した結果、LCRは細胞内でランダムに発生しているのではなく、膜電位の深いミトコンドリアが集積する部位において、LCRの発生頻度が高いことを示した。ミトコンドリアNCX(NCXm)の阻害薬CGP-37157はLCRを抑制することからも、ミトコンドリアはNCXmを介して筋小胞体カルシウムを制御する可能性があった。本年度は、単離マウス洞房結節細胞を200 msecごとにフィールド刺激およびカフェイン刺激を行い、Ca2+トランジエント振幅に対するCGP-37157の作用を検討した。その結果、CGP-37157は有意にフィールド刺激およびカフェイン刺激で誘発されるCaトランジエントの振幅を抑制した。ミトコンドリアによ筋小胞体へのCa供給に加え、代謝の関与の可能性も検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、グルコース刺激による変則性リズム形成へのLCRの関与を解析するため、Ca2+指示薬Calbryte520 AMを負荷したマウス単離洞房結節細胞の収縮を撮影・記録する予定であったが、本年度はまずグルコース刺激が洞房結節由来の不整脈発症に関与するか否か、臓器レベルでの検討を行った。 一方で、当初の計画をさらに発展させ、ミトコンドリアの空間分布とLCRの発生部位との位置関係、およびミトコンドリア-筋小胞体Ca2+連関を明らかにしたものの、今後グルコース刺激による作用およびそのメカニズム(シグナル伝達系)を明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
①グルコース刺激による変則性リズム形成へのLCRの関与を解析: Ca2+指示薬Calbryte520 AMを負荷したマウス単離洞房結節細胞のCa2+イメージングを行い、5 mMと20 mMグルコース存在下で惹起されるLCRおよびCa2+ transientの振幅、Ca2+ transientからLCR発生までの時間(LCR period)、Ca2+ transientの周期長(CL)を比較・検討する。 ②LCRの制御破綻および変則性リズム形成を惹起するシグナル伝達系の解析およびミトコンドリア代謝の関与を検討: 1) 20 mMグルコース負荷で惹起した変則性収縮およびLCR・Ca2+ transientの振幅、LCR period、CLの変化におけるEpac-Rap-PLC/IP3-PKC-CaMKIIの関与を、それぞれの阻害薬を用いて検討する。2) O-GlcNAcylationによるCaMKII活性化の関与を検討し、Epac-Rap-PLC/IP3-PKC-CaMKIIシグナル伝達系におけるO-GlcNAcylationの位置づけを明らかにする。3) Ca2+指示薬Mag-Fluo-4を用いて、グルコース刺激による筋小胞体のCa2+の変化を直接検討する。4)IP3Rの関与を検討する。5)ミトコンドリア代謝の関与をATP合成酵素や電子伝達系の阻害剤を用いて検討する。 ③グルコース刺激による不変則性リズム形成メカニズムのシミュレーション解析: マウス洞房結節細胞モデルを構築し①と②の実験データや文献を基にEpacシグナル伝達系を含むマウス洞房結節細胞モデルを完成させ、グルコース刺激で惹起されるLCRの変化および変則性リズムをコンピュータ上に再現させ、そのメカニズムを定量的・総合的に解明する。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた、グルコース刺激のLCRおよびCa2+ transientに対する作用を検討するための実験を翌年度に実施することと変更したため、計上していた実験用動物、細胞単離試薬、蛍光標識試薬購入のための予算を次年度使用額として改めて計上する。また、Epac-Rap-PLC/IP3-PKC-CaMKII系におけるそれぞれの因子の阻害薬(ESI-09(Epac), U73122 (PLC, IP3), Ro-31-8220 (PKC), KN-93 (CaMKII))やO-GlcNAcylation によるCaMKII の関与を検討するため試薬(O-GlcNAcylation の阻害薬diazo-5-oxonorleucineおよびO-GlcNAcを除去する酵素O-GlcNAcaseの阻害剤thiamet-Gを使用)、IP3Rの関与を検討するための阻害薬(2APB/Xestospongin)、Ca2+指示薬Mag-Fluo-4の費用を計上する。
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Research Products
(3 results)