2021 Fiscal Year Research-status Report
新しい翻訳後修飾「ヒスタミン化」の分子機構と機能的意義の解明
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19K07320
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
倉増 敦朗 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90302091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 清 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30346564)
本田 健 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30457311)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マスト細胞 / ヒスタミン / トランスグルタミナーゼ / 蛋白質翻訳後修飾 / ヒスタミン化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスグルタミナーゼは蛋白質間の架橋反応や蛋白質への一級アミン修飾反応を媒介する酵素である。ヒスタミンは細胞外情報伝達物質として広く認識されているが、一級アミンであることからトランスグルタミナーゼの基質となり細胞内で翻訳後修飾物質として機能している可能性がある。本研究は、「トランスグルタミナーゼによる蛋白質のヒスタミン化修飾反応が、細胞の生理機能に重要である」という仮説を検証しようとするものである。前年度までに、マウスマスト細胞のヒスタミンに対する走化性には、トランスグルタミナーゼ活性と内因性ヒスタミンが必要であることがわかっている。 今年度は、走化性に重要なH4受容体直下のシグナル伝達に対するトランスグルタミナーゼの関与を検討した。マスト細胞のヒスタミンに対する走化性には、ヒスタミンH4受容体からのシグナルが重要である。H4受容体は、低分子量G蛋白質Rac1およびRac2の活性化を介して、その下流でERKやAktをリン酸化する事がわかっている。トランスグルタミナーゼ阻害薬のR283やZ-DONは、ヒスタミンによるERKリン酸化やAktリン酸化を阻害しなかった。この結果は、トランスグルタミナーゼによる走化性制御はH4受容体直下のシグナル伝達を直接修飾していないことを示唆する。 また、マスト細胞のトランスグルタミナーゼ活性の大部分は細胞質分画にあるが、核分画にもトランスグルタミナーゼ活性があることを確認した。走化性の抑制には長時間のトランスグルタミナーゼ阻害薬処理が必要なことから、トランスグルタミナーゼによる蛋白質修飾は転写などの長い時間を要する細胞事象に関与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒスタミンに対するマスト細胞の走化性に、内因性ヒスタミンおよびトランスグルタミナーゼ活性が必要なことは示すことができた。しかし、トランスグルタミナーゼによるヒスタミン化修飾の標的蛋白質はまだ同定できておらず、どのような分子機序で走化性制御に至るのかが不明である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ヒスタミン化修飾の標的蛋白質の同定を目指す。ヒスタミンと同じモノアミンであるセロトニンによるヒストン修飾が転写を制御するという報告があるので、ヒスタミン化修飾による転写制御の可能性について検討する。このため、トランスクリプトーム解析を行う。具体的には、マスト細胞を用いてトランスグルタミナーゼ阻害薬処理により発現量に差が生ずる遺伝子群と内因性ヒスタミンの有無により発現量に差が生ずる遺伝子群を同定する。これら2群に共通して、同じ方向に発現量が変化する遺伝子を探索する。さらにその中から走化性にかかわる遺伝子を絞り、それらの発現調節にかかわる転写因子やエピゲノム調節因子などをヒスタミン化される蛋白質の候補として、検討していく。また、セロトニン合成阻害の影響を検討する。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析のためRNAシークエンス解析を行う予定であったが、遺伝子改変マウス導入の遅れ、マスト細胞調製が遅れたため、今年度はこれらの実験ができなかった。また、実験補助に謝金を支払う予定であったが、今年度は研究者自身で行ったため実験補助が不要であった。次年度に実験動物、細胞培養試薬およびRNAシークエンシング受託解析のために使用し,それ以外の使用計画に大きな変更はない.
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