2020 Fiscal Year Research-status Report
紫外線暴露により水晶体で発現誘導されるOtx2の白内障発症における役割の解明
Project/Area Number |
19K07407
|
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
米倉 秀人 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80240373)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 洋 金沢医科大学, 医学部, 教授 (60260840)
大塚 哲 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40360515)
池田 崇之 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (00374942)
吉冨 泰央 金沢医科大学, 医学部, 講師 (80399039)
高辻 英仁 (齋藤) 金沢医科大学, 医学部, 助教 (40768959)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 白内障 / 紫外線 / 水晶体 / Otx2 |
Outline of Annual Research Achievements |
白内障は紫外線(UV)の関与が明らかになっているが、発症の分子機構は未だ不明である。本研究課題の問いは、生体にある水晶体はUV暴露によりどのような遺伝子発現変化が引き起こされ、それがどのように白内障発症につながるのか?である。我々は、UV照射したマウス水晶体で転写因子Otx2の発現が誘導されること、Otx2過剰発現が水晶体上皮細胞の上皮間葉変換(EMT)を引き起こすことを見出した。本研究では、Otx2の過剰発現がどのような白内障を引き起こすか、Otx2の発現を止めると白内障の発症が抑えられるかを個体レベルで明らかにすることを目的とする。 2020年度は、(1) 水晶体上皮細胞および水晶体線維細胞特異的プロモーター(クリスタリン遺伝子プロモーターにPAX6の結合サイトを挿入したプロモーター)の制御下にOtx2 cDNAを連結したトランスジェニックマウス作成用のOtx2発現ベクターをマウス受精卵400個に導入し、Otx2発現ベクターが導入されたマウスが1系統得られた。(2)得られたOtx2トランスジェニックマウスの水晶体の状態を生後より経過観察したところ、形態変化や混濁は検出できなかった。Otx2トランスジェニックの水晶体でのトランスジーンの発現を免疫組織化学法で解析したところ、発現細胞が極めて少数であることが判明した。同一のプロモーターに連結した他の遺伝子は水晶体皮質領域で高い発現が観察されることから、おそらく、導入したOtx2が水晶体発生過程で何らかの機構により発現抑制あるいは分解促進を受けている可能性が考えられる。(3) 水晶体細胞特異的にOtx2をノックアウトまたはノックダウンするマウスの作成を進めた。(4)白内障手術後に発症する後発白内障のマウスモデルの確立を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスジェニックマウス作成用のOtx2発現ベクターをマウス受精卵400個に導入したにもかかわらず、Otx2発現ベクターが導入されたトランスジェニックマウスは1系統しか得られなかった。得られたOtx2トランスジェニックの水晶体の状態を生後より経過観察したところ、形態変化や混濁は検出できず、トランスジーンの発現細胞が極めて少数であることが判明した。同一のプロモーターに連結した他の遺伝子のトランスジェニックマウスでは水晶体皮質領域で高い発現が観察されることから、おそらく、導入したOtx2が水晶体発生過程で何らかの機構により発現抑制あるいは分解促進を受けている、あるいは、水晶体特異的プロモーターながらトランスジーンからのリーク発現により発生が阻害され胎児段階で死亡している可能性などが考えられる。以上のように、当初予定していた複数系統のOtx2過剰発現トランスジェニックマウスが得られていないため、予定よりやや遅れていると評価される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1) 水晶体細胞特異的かつコンディショナルにOtx2をノックアウトまたはノックダウンするマウスを作成し、これらマウスにUV-B誘起白内障モデルを適用し白内障発症が抑制されるかを解析することを優先的に進める。ノックアウトの場合は、Otx2-floxedマウス、および、Cre-ERT2(tamoxifen誘導型Cre)マウス、水晶体特異的Cre-ERT2(Pitx3-CreERT2)を入手し、コンディショナルに水晶体細胞でOtx2をノックアウトするマウスを作成する。ノックダウンの場合は、shRNAがコンディショナルに発現させることが可能なように工夫を行った水晶体細胞特異的Otx2 shRNA発現ベクターを作成しマウス受精卵に導入する、あるいは、水晶体細胞特異的Otx2 shRNA発現レンチウイルスベクターの水晶体への投与などを検討する。(2) 2020年度に得られた水晶体細胞特異的Otx2過剰発現トランスジェニックマウスのより長期的かつ詳細な観察を続けるとともに、コンディショナルに水晶体細胞でOtx2を過剰発現させることが可能なマウスの作成を検討する。(3) UV-B照射によるOtx2発現亢進はUVBによる活性酸素(H2O2)生成を介していることが示されていることから、UV-B照射による白内障マウスモデルにおいて、抗酸化剤の投与でOtx2の発現が抑えられ、水晶体混濁が抑制されるかの検討を行う。Otx2アンチセンスDNAやsiRNAを白内障モデル動物の眼内に投与する手法の開発も試みる。(4)白内障手術後に発症する後発白内障にEMTの関与が示唆されていることから、後発白内障でのOtx2の発現動態を解析する。
|
Causes of Carryover |
複数系統が得られると見積もっていたトランスジェニックマウスが1系統しか得られなかったため、解析用の試薬の費用が減少したため、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、2021年度に得られる予定のOtx2ノックアウトマウスあるいは過剰発現マウスの解析に使用する。
|
Research Products
(8 results)