2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンス技術を活用した子宮肉腫のゲノム病理学的研究
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19K07433
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 大地 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (30585500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 明輝 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90317090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子宮間葉系腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮に生じる肉腫の大部分は内膜間質肉腫(ESS)、平滑筋肉腫(LMS)に分類されるが、いずれにも該当しない腫瘍、分類困難な腫瘍が少なからず存在する。子宮肉腫は婦人科腫瘍の中でも病理形態診断が困難な領域で、殊にESSでは組織亜型分類自体の変遷が続いてきた。近年の研究によって、ESSにはJAZF1-SUZ12融合遺伝子に特徴づけられる低異型度かつ予後良好な群と、YWHAE-NUTM2融合遺伝子に特徴づけられる高異型度かつ予後不良な群が存在することが明らかとなり、遺伝子異常をある程度反映する形で疾患概念が整理されつつある。その後もZC3H7B-BCOR融合遺伝子、PHF1融合遺伝子を有する肉腫が報告され、それぞれの病理組織像、臨床像について知見の蓄積が進んできているものの、少数例の検討が主体で、背景遺伝子異常の全容解明には至っていない。これら子宮間葉系腫瘍の背景遺伝子異常を探索する際には、従来、FISH法が用いられてきたが、多様な遺伝子異常を検出する作業は煩雑かつ困難である。本研究では、子宮肉腫の遺伝子変異、融合遺伝子を検出するにあたって次世代シーケンサー(NGS)を活用する方針とした。まず、初年度は独自の技術を用いて既知の子宮肉腫関連の遺伝子異常を網羅する遺伝子パネルを構築した。そのうえで子宮肉腫を含む間葉系腫瘍のホルマリン固定検体を対象にターゲットシーケンスを行った。その結果、NTRK融合遺伝子を有する腫瘍、PHF1融合遺伝子を有する腫瘍などを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
融合遺伝子検出用のパネルの構築に成功し、実検体において良好な結果が得られていることから、今後対象症例を増やすことで展望が開けると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の要件を軸に研究を展開していく。 (1)子宮肉腫関連遺伝子パネルによるターゲットシーケンス(FFPE検体:目標約80例)子宮肉腫関連遺伝子パネルを用いて、子宮肉腫約80例を対象に変異、融合遺伝子検出を行う。 (2)子宮肉腫の全ゲノム解析 (凍結検体:約5例) 子宮肉腫関連遺伝子パネルを用いた検討で遺伝子異常が検出されなかった症例を優先的な検討対象とし、RNA-seqを施行する。 (3)遺伝子異常プロファイルをふまえた臨床病理学的検討 前年度までの解析によって得られた子宮肉腫の遺伝子異常プロファイルをもとに、病理組織所見、臨床各因子との相関を検討し、各遺伝子異常の臨床病理学的意義を明らかにする。 (4)子宮肉腫の新規遺伝子異常の生物学的意義の解明 全ゲノム解析によって新規遺伝子異常が同定された場合には、in vitro実験系で生物学的意義を検証する。具体的には、遺伝子導入によるpathway解析、増殖能、浸潤能の検討を行う。
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