2020 Fiscal Year Research-status Report
B型肝炎ウイルスの細胞内侵入メカニズムの解明と侵入阻害剤開発への応用
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19K07574
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
田中 智久 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (30585310)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HBV / エントリー / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
HBVは宿主肝細胞にエントリー後、ウイルス複製中間体として安定的な環状DNAを形成するため、治療薬により慢性HBV感染を根治することは困難である。実際、HBV治療薬として現在使用される核酸アナログ製剤ではHBVを排除することができず、一般的に生涯にわたるような長期的な投薬治療が必要となる。このようなHBV感染に伴う環状DNAの形成を阻害する方法として、HBV感染そのものを防ぐことが有効な手段のひとつとなりえる。そこで本研究課題では、HBV感染の最初のステップであるウイルス侵入(エントリー)のメカニズムを解明することにより、HBV感染を阻害する治療薬の開発につながる新たな知見を得ることを目的として当年度の研究を実施した。 本年度では、スクリーニング実験から見出した宿主因子がどのようにHBVエントリーに関与するかを明らかにするため、ゲノム編集技術を用いてノックアウト細胞を作製するとともに、その発現回復細胞を作製し、同宿主因子のHBVエントリーへの関与を明らかにした。また、同宿主因子の機能がHBVエントリーに関与するかどうかを調べるため、同因子のリコンビナント蛋白質を用いたin vitro評価系を構築し、同宿主因子の機能を阻害する化合物のスクリーニングを実施した。これにより、同宿主因子の機能を阻害する化合物を同定した。この化合物は、培養細胞を用いたHBV感染実験においてHBV感染を阻害したことから、同宿主因子を標的とするHBVエントリー阻害剤の開発が可能なことが示唆された。これらの成果より、HBVエントリーに関与する宿主因子とその分子メカニズムが明らかになったとともに、同宿主因子は新規HBV治療薬開発の新たな標的分子となりえると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では、HBVエントリーのメカニズムを解明するため、これまでに申請者が同定した宿主因子の発現を欠損するノックアウト細胞株と、その発現回復細胞を作製した。その結果、同宿主因子のノックアウト細胞でHBVエントリ―効率が減少し、その発現回復細胞でエントリー効率が改善することを明らかにした。また、同因子の酵素活性がHBVエントリーに関与するか検討した。大腸菌を用いて同宿主因子のリコンビナント蛋白質を作製し、同宿主因子の酵素活性をin vitroで評価できる実験系を構築し、同因子の酵素活性を阻害する阻害剤をスクリーニングした。これにより得られた阻害剤は、NTCP発現HepG2細胞、および初代培養肝細胞におけるHBVエントリーを抑制することを明らかにした。これら解析の結果、本宿主因子の酵素活性がHBVエントリー関与することが示唆された。また、その阻害剤は新たなHBV治療薬の候補となることが示唆された。 一方で、本年度ではNTCP複合体の精製によりHBVエントリーに関与する宿主因子を同定することを計画していたが、NTCP複合体の精製が困難なため、宿主因子の同定に至ることができなかった。複合体精製に用いるアフィニティ精製の改良や、界面活性剤の検討が必要と考えられた 以上のことから、HBVエントリ―の分子メカニズムの解明や、その経路を阻害する化合物の探索は概ね計画通りに順調に進捗しているが、新たな宿主因子の探索ではさらなる条件検討が必要なことが判明し、計画からはやや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
HBVエントリーの詳細な分子メカニズムを解明するため、本研究で注目する宿主因子の活性に関与する部位に変異を導入した変異体を作製し、これらのHBVエントリーへの関与の有無を解析する。具体的には、上述のノックアウト細胞にこれら変異体の発現を導入し、HBVエントリー効率への影響を解析する。また、これら変異体の過剰発現により、培養細胞へのHBVエントリーが阻害されるかを検討する。これに加え、同宿主因子とNTCPや、HBVエントリーへの関与が示唆されているEGFR蛋白質などとの相互作用を解析することにより、HBVエントリーの分子メカニズムを明らかにする計画である。本年度達成できなかったNTCP複合体の精製・解析については、NTCP複合体精製の界面活性剤や抽出条件を検討し、精製効率の改善を行う計画である。 これら研究計画により、HBVエントリーの分子メカニズムや、それを標的としたHBV治療薬開発につながる新たな知見が得られると考えている。
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