2022 Fiscal Year Research-status Report
Regulation mechanism of apoptosis-inducing death receptor localization allowing for survival in tumor cells
Project/Area Number |
19K07648
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小島 裕子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (60231312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腫瘍細胞 / 細胞死 / DR5 / 局在 / 細胞膜 / 核 / ゴルジ装置 / 細胞内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
リガンドであるTRAIL分子と、細胞膜上で結合して細胞死を誘導するDR5タンパク質が、TRAIL耐性腫瘍細胞内では細胞膜より核に大量に局在するこれまでの実験事実を元に、DR5の局在を制御して細胞膜での発現を高めて、腫瘍細胞に対して広く細胞死誘導を可能にする機能分子を探索する目的で、バーコード化された約6,500種類のヒトタンパク質に対する約55,000種類のshRNAを含む、ヒトゲノムワイドshRNAライブラリーのモジュール#2(標的遺伝子:疾患関連遺伝子、薬剤標的遺伝子)を用いた。HEK293Tで調整した偽ウイルス粒子を、単なるTRAIL低感受性HeLa細胞株ではなく、HeLa細胞株にdeath domain欠損GFP-DR5を予め遺伝子移入した細胞に感染させてshRNAを遺伝子導入した。shRNAの選択薬剤であるDoxycyclineとGFP-DR5の選択薬剤であるG418共存下で培養、細胞膜に発現するDR5をPacific blue標識抗体で蛍光標識し、shRNAと共に遺伝子導入したTagRFP発現細胞で且つGFP発現細胞の中で、親株の細胞よりも細胞膜のDR5発現が高い細胞集団(DR5 high)をFACSでソートした。 初回ソートでDR5 highはわずか0.7%だったが、5回目のソートで約50%に濃縮された。この細胞集団のコントロールとして、同様に遺伝子導入を行い、TagRFP陽性細胞で細胞膜DR5の発現が低い約80%の細胞をソートした。これらの細胞をレーザー顕微鏡で観察すると、GFP-DR5の蛍光がDR5 high の細胞では核に観察されず、ER領域と細胞膜に極めて明るく検出された。 一方、コントロール細胞は、主に核にGFP-DR5が観察され、細胞質や細胞膜の発現は弱く、ER領域の集積は認められなかった。そこで、これら2種類の細胞集団の遺伝子受託解析を依頼する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、ヒトshRNAライブラリを導入する細胞として野生型HeLa細胞株を用いていたが、目的の細胞を濃縮するためにFACSでソートを繰り返しても、DR5 highの細胞は存在するもののその割合が低いままで、目的のDR5 highだけを殖やすことができず、結果的に濃縮されなかった。そのため、バルクの状態で細胞を培養するのを止め、早い段階でクローニングを行うなど、方法を変えて実験を繰り返したが改善が見られず、時間を消費した。 目的の細胞が濃縮できないのは、ある遺伝子のshRNAの導入により、細胞膜に発現するDR5が増えた結果として細胞死が誘導され、DR5 highの細胞が選択的に排除されている可能性があると考え、今回、shRNA遺伝子を導入する細胞を、細胞死を起こしにくくなる細工をした、death domain欠損HeLa細胞に変更し、実験をやり直した。これにより、更に予定外の時間を要した。 しかし、結果的には何とか目的の細胞が得られたと考えられ、予定していた遺伝子受託解析を依頼するところまで進められた。研究期間を1年間延長して、その解析結果を元に先の実験に進みたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. DR5 highとそのコントロール細胞について、ノックダウンに用いた各shRNA遺伝子に1対1で対応するバーコード化遺伝子のハイスループットシーケンシングによる受託解析結果を元に、DR5 highでコントロール細胞より有意にノックダウンされた分子、特に、同じ分子をノックダウンする複数のshRNAにおいて有意差が見られた分子に着目し、細胞内輸送に関係すると考えられる分子(合成されたDR5を膜に輸送する過程を阻害する、または膜から細胞質や核への輸送を担う)を中心に、候補分子を複数ピックアップする。 2. 1の候補分子について、siRNAを用いてdeath domain欠損GFP-DR5発現HeLa細胞にノックダウンを誘導し、Incucyteまたはレーザー顕微鏡でGFP-DR5の局在を調べる。その局在を、siRNAコントロール細胞と比較して、DR5の細胞膜での発現が高くなる分子を探す。単独で効果が低い場合は、複数のsiRNAを組み合わせてノックダウンを試みる。 3. 2で細胞膜DR5発現が高くなるsiRNAを、death domain非欠損の野生型DR5遺伝子を持つHeLa細胞株にトランスフェクションし、細胞死が誘導されるかを調べる。 4. 3で細胞死の誘導を有意に亢進した分子について、siRNAで遺伝子をノックダウンする以外に、その分子の働きを抑制する薬剤を探し、その薬剤を作用させて野生型DR5を持つHeLa細胞株で細胞死が誘導されるかを調べる。 5. 4で細胞死を誘導した薬剤について、他のTRAIL耐性腫瘍細胞(ex. HepG2細胞株)についても、HeLa細胞株同様の効果があるかを調べる。 これらの実験より、TRAIL耐性ヒト腫瘍細胞株において、DR5の細胞局在に関与してDR5の細胞死誘導機能を高める分子を同定し、その分子機能の調節が、新たながん治療になり得るかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
学会参加を控えたことと、実験の物品費が嵩んだため、学会参加費と旅費の余剰を物品費に回した。また、購入済みの試薬、器具と、既に調製した実験材料を繰り返し利用して支出を抑え、次年度に繰り越すことで結果的に実験期間を確保して、当初予定していた実験を遂行する。
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