2022 Fiscal Year Research-status Report
低酸素による可溶性IL-33受容体の発現低下が大腸がん悪性進展に及ぼす影響の解析
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19K07673
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
秋元 美穂 帝京大学, 医学部, 助教 (60437556)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低酸素 / 大腸がん / インターロイキン-33 / sST2 / 転移抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究の過程で、腫瘍組織中のがん細胞における低酸素誘導性のsST2発現低下の回復が、炎症性微小環境の改善と腫瘍増殖抑制に有効であることを示した。しかしながら、これに際して用いたNM11細胞は低転移性のため遠隔転移が成立せず、低酸素誘導性のsST2発現が転移に及ぼす影響については検討することができなかった。そこで、マウス大腸がんLuM1細胞を用いた転移モデルにより検討することとした。LuM1細胞はNM11細胞より派生した高転移性の細胞であり、LuM1細胞担がんマウスの肺表面に形成される転移結節の観察により、転移能を容易に評価しうる。低酸素応答性にsST2を発現するプラスミドベクター(5HRE-sST2)をLuM1細胞にトランスフェクションし、低酸素誘導性のsST2の発現低下が抑制された細胞を取得した。この細胞を同系のBALB/cマウスに皮下移植し、腫瘍中の低酸素領域におけるsST2発現低下が回復されることを確認した上で、それが肺転移に及ぼす影響を解析した。また、これまでの我々の知見から、大腸がん細胞におけるsST2の発現はがん微小環境内でのIL-33/ST2Lシグナリングの亢進に繋がることが分かっているので、それに付随して見られるIL-33/ST2L誘導性のTh2分化・腫瘍随伴性マクロファージ(TAM)の浸潤・腫瘍血管形成について中心的に解析を行った。この実験系により、腫瘍組織内の低酸素領域を標的としたsST2発現の回復が大腸がんの増殖だけでなく、転移の抑制にも有効であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低酸素誘導性のsST2発現が転移に及ぼす影響を明らかにする目的で、高転移性のマウス大腸がん細胞を用いた検討を別途追加したため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、低酸素誘導性のsST2発現低下の分子メカニズムに関しては、低酸素下で核に集積したIL-33がGATA3と結合し、GATA3のST2プロモーターへの結合を阻害することでsST2の発現が低下することを示した。この時点では、GATA3がST2プロモーター上のどこに結合するのか特定できていないので、ゲルシフトアッセイを行ってより詳細な分子機構を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
解析事項が追加となり、そのための試薬や実験動物等の購入費に使用する必要が生じたため。
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Research Products
(4 results)