2020 Fiscal Year Research-status Report
膵管癌を発症する遺伝子改変マウスを用いた癌関連線維芽細胞の分化メカニズム解明
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19K07682
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
池原 譲 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10311440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉富 秀幸 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60375631)
山口 高志 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (60626563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子改変膵臓発がんマウスモデル / 間葉系幹細胞 / 癌関連線維芽細胞 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に膵管癌細胞株と骨髄由来間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell [MSC])の共培養で、癌関連線維維芽細胞(Cancer Associated Fibroblast [CAF])を誘導できることを見出したので、本年度はまず、その再現性確認と遺伝子発現変化の解析を実施した。また、出現したCAFに対し、alpha-smooth muscle actin(SMA)、Meflin、fibroblast activation protein alphaなどのCAFマーカーを認識する抗体で評価したところ、ほとんどのCAFでSMAが陽性となることを見出した。さらに、マウスで発癌させた組織のCAFが、骨髄に由来する可能性を明確にするために、代表者の開発した膵管癌を発症する遺伝子改変マウスモデルにTomatoもしくはGFPを発現するマウスの骨髄を移植し、骨髄に由来する細胞のすべてがTomatoもしくはGFPを発現する状態とした。なお、このマウスは、膵臓特異的に発現させたKrasG12Dとともに、Doxycycline (Dox)投与依存的にSV40 tsA58 T抗原を発現させることで膵管癌を発症し、Dox投与開始後2週間の間にCAFを豊富に伴う膵管癌の進展により死亡する。 一連の検討により、骨髄移植後2か月で末梢血が移植した骨髄細胞に完全に置き換わること、そして骨髄移植後もPanINが存在することを確認した。Dox投与開始後5日目と7日目には、Cytokeratin-19が陽性となる膵管癌の発生を確認し、癌の進展に伴うCAFの出現・増加も確認できた。現在、回収した膵臓組織を対象に膵管癌の間質を構成する細胞について、TomatoもしくはGFPに由来する蛍光と、CAFマーカーの同定を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、癌関連線維維芽細胞(Cancer Associated Fibroblast [CAF])がどの細胞から発生し、どのように分化してくるのかを突き止めることであり、特に膵管癌の間質を構成するCAFに着目した研究を進めている。 予定した計画は、「I) 膵管癌CAFに特徴的な遺伝子発現・糖鎖発現、活性化しているシグナル伝達系を明らかにする」、「II) 得られた結果の検証」、「III) MSCから膵管癌CAF分化をin vitroで再現する」、の3つの項目を設定している。今年度は項目I~III)のすべてを進め、その進捗は当初に計画した通り順調に推移している。 特に、in vivo研究システムを用いた研究において、7日目までに完成する癌間質の形成に寄与するCAFのもとになる細胞の由来に迫ることができた。そしてin vitroの研究システムでの解析結果と組み合わせることで、CAFへと分化成熟してくる際に観察される遺伝子発現変化をもとに、CAFのもとになる細胞からCAFへ分化してくるメカニズムの理解が深まった。現在までに、CAFが膵管癌の間質を構成するようになるプロセスとメカニズムの理解について、必要なエビデンスの取得が進んでいることから、おおむね順調な進展であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を遂行する上で障害となった技術課題等は発生していないので、今後の研究計画に変更予定はない。 「研究項目I) 膵管癌CAFに特徴的な遺伝子発現・糖鎖発現、活性化しているシグナル伝達系を明らかにする」においては、膵管癌のCAFに特徴的な遺伝子発現・糖鎖発現、活性化しているシグナル伝達系の解析を進めてゆく。 「研究項目III) MSCから膵管癌CAF分化をin vitroで再現する」においては、in vitroで生成してくるCAFに発現する遺伝子プロファイルを、1細胞RNAseqで解析する。さらには、マウス膵管癌のCAFを特徴づけるマーカー分子、活性化しているシグナル伝達系、そして糖鎖構造の同定を進める。 「研究項目II) 得られた結果の検証」においては、臨床検体を使用してIとIIIで得られた成果を確認する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究においては、CAFのもとになるMSCが骨髄に由来する可能性を明確にするために行った骨髄移植モデルの作成とその検証に必要な病理組織学的解析に時間を費やすことになったため、次年度使用額が生じた。実際、末梢血が移植した骨髄細胞に完全に置き換わるまでに必要な時間は骨髄移植後2か月であることを決定すること、PanINの存在を確認すること、そしてDox投与開始後5日目と7日目にCAF を伴うCytokeratin-19陽性の膵管癌の発生を確認することに時間を要した。このため、次年度使用額が生じている。 一方、in vivoモデルの解析では、7日目までに広がるCAFの発生に寄与する分子メカニズムを見出すとともに、細胞ソートの条件を検討するのに十分な匹数のマウスも確保できている状況であることから、今後これらを使用して1細胞RNAseqでの解析を進める予定である。
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Research Products
(7 results)