2020 Fiscal Year Research-status Report
筋組織内代謝変化を標的としたがん悪液質新規治療法の開発
Project/Area Number |
19K07731
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
布川 朋也 徳島大学, 病院, 講師 (70564342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 弥生 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 学術研究員 (10632490)
二川 健 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20263824)
津田 惠 徳島大学, 病院, 助教 (30769188)
尾崎 啓介 徳島大学, 病院, 医員 (30814157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪液質 / 筋萎縮 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質研究はマウス由来モデルを中心に発展し、サイトカイン等の悪液質発症への関与が示されてきた。しかし、未だに有効な治療法の確立には至っていない。 研究代表者らは、先の研究においてヒト由来がん悪液質モデルを構築した。このモデルを用い筋細胞内における脂質代謝の変化ががん悪液質における筋萎縮の発症に深く関与することを示した。本研究では、細胞内の代謝変化と筋萎縮の関連をさらに詳細に明らかにする。最終的には、脂質代謝を標的とした悪液質に対する安全でかつ新しい治療法の開発を目指す。 ヒト細胞由来因子によるヒト由来筋細胞の刺激により、細胞内代謝が大きく変化することを明らかにした。ヒト細胞由来因子によりCE/MS解析では、クエン酸回路内の代謝変化、また、解糖系の代謝変化が認めらることを明らかにした。さらにLC/MS解析では、筋細胞内の脂質濃度の著明な上昇を認めることがあきらかになっている。これらの結果と研究代表者らの先の結果から、現在筋細胞内脂質代謝でも、特に高脂血症等に対する治療薬のなかで、脂質合成経路を標的とした治療薬の検証を進めている。 過剰な脂質合成関連分子の変化を抑制することによるオートファジー、ユビキチンープロテアソーム、アポトーシス、そしてこれらに関連するNF-kB、p38、SMAD、PI3-AKT-mTOR signaling pathwayへの影響についてWB等による検証を行っており、これによりin vivo実験における検証を行う薬剤の選択を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では研究計画2年目までに薬剤選択が終了し、in vivoでの検証実験を進める予定であったが、絞り込みに時間を要していることからやや遅れていると判断している。 現時点で、がん細胞由来因子による代謝変化として著明な脂質の細胞内濃度上昇、TCA回路内の代謝産物の変化および解糖系代謝産物の変化についての評価は行っている。 また、脂質合成系を標的とした治療を行うことについても絞り込みが進んでいる。 しかしながら、薬剤使用による治療を行った際のがん悪液質モデルにおける筋萎縮の抑制効果の背景にある分子の変化などは十分な検証が行えているとは言えず、現時点ではin vivo実験に移行するのに十分な検証ができたとは言えない状況である。また、脂質代謝を治療標的とした際の治療効果のバイオマーカーについても現時点では同定できておらず、計画と比べてやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞株とヒト由来筋細胞を使用したin vitroモデルを用いて、脂質合成に関連する分子を標的とした薬剤使用時の筋萎縮抑制効果について、その背景にある機序を明らかにすること目指す。とくに、筋萎縮への関与が示されているROS発生の評価や、オートファジー、ユビキチンープロテアソーム、アポトーシス、そしてこれらに関連するNF-kB、p38、SMAD、PI3-AKT-mTOR signaling pathwayなどについて、薬物使用時の変化を評価する。この評価を通じて、がん悪液質においてその活性化が筋萎縮に関連するとされている経路のうち、脂質合成抑制により改善が得られる経路を特定することで、標的と考えている脂質合成関連分子の変化と筋萎縮の関連をより詳細に解明する。そして、このような実験結果から、脂質合成関連分子を治療標的とする際の、バイオマーカーとなる候補分子の同定も試みる。 さらに、in vitro実験の結果を踏まえてXenograftモデルを用いた前臨床実験による筋組織内代謝変化を標的とした治療法の今後の可能性について検証を行う。具体的には治療薬によりin vitro実験で明らかになった分子についてウエスタンブロッティングやLC/MSで評価を行い治療効果の検証と作用機序の確認を行う。さらに治療効果とバイオマーカーの相関関係についても明らかにすることで、実臨床における治療評価を予測することを容易にすることを目指す。
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Research Products
(6 results)