2020 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌エクソソーム内在miR574-3Pを用いた腹膜播種の抑制
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19K07748
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
堀江 香代 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (30626825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 純 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (10201188)
下田 浩 弘前大学, 医学研究科, 教授 (20274748)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / miRNA / 腹水 / 卵巣癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の成果として、腹水エクソソームに内在する候補因子の解析を行うにあたり、患者さんから得られた腹水はサンプル量が限られているため、まず予備実験として培養細胞上清を用いたリアルタイムPCRの条件検討を行った。エクソソーム内在コントロールは確立されたものが少ないため、数種の因子を用いた検討を試みた。方法として、組織型の異なる6種の卵巣癌細胞株から培養上清を回収しExo Easy Maxi kit(QIAGEN)によるエクソソームの回収及び内在miRNAの抽出を行った。その後TaqMan small RNA assay (Applied Biosystems)を用いたリアルタイムPCRによる定量解析を行った。エクソソーム内在性コントロールにはmRNAとしてGAPDHおよびβアクチンを用い、miRNAとしてはU6,miR24を使用した。その結果、GAPDHとU6はいずれの細胞株培養上清からも同程度のmRNAが検出され、細胞間でのバラつきも少なく内在性コントロールとして使用可能であることが確認された。次に候補因子である、miR574-3PとmiR-24について解析を行ったところmiR574-3Pはコントロールである正常ヒト卵巣上皮細胞に比べ様々なタイプの卵巣癌細胞で発現の増加が認められた。加えて、腹水中のmiRNAが微量な場合を想定し、高感度DropletDigital PCR (ddPCR)を用いて条件検討を行った。検討内容としては内因性コントロールであるU6を用いてddPCRの反応条件、アニーリング温度の検討を行った。しかしながら発現量が微量なため十分に検出されず条件決定に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の「卵巣癌患者腹水を用いたmiR574-3Pバイオマーカー及び予後・予知因子の解析」が終了しておらず、今年度も引き続き行っていたため2020年度の計画「卵巣癌細胞株と腹膜を構成する中皮細胞株を対象としてmiR574-3P抑制エクソソームの影響を明らかにする」は遅れている。その理由として、現在のところ腹水中のエクソソーム解析はほとんど行われておらず、腹水からのエクソソームの回収条件や内在するmiRNAの抽出条件などを詳細に検討する必要があり、条件検討に時間がかかってしまった。臨床材料である患者腹水はサンプル量が限られており十分な検討を行うことが難しく、また個体差が大きく回収されるエクソソームの量や質にも大きなバラツキがみられ困難であった。加えて令和2年3月からの新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い培養細胞の購入機関(理化学研究所)において5月4日~6月7日まで細胞の送付が行われず到着が遅延した。また大学構内への立ち入り制限等があり、思うように実験が進まなかった。現在までに培養細胞上清サンプルを用いた予備実験を行いリアルタイムPCRによるmiR574-3Pの検出は可能であったが、再現性に乏しく腹水サンプルで十分な結果が得られるか不安が残る状態である。加えて、腹水中のmiRNAが微量な場合を想定した高感度DropletDigital PCR (ddPCR)の条件検討を行ったが発現量が微量なため十分に検出されず条件を決定するまでに至っていない。今後はエクソソーム回収時のサンプル量を増やし、濃縮したサンプルを用いることでddPCRの条件を決定する。加えて現在腹水サンプルは25症例までそろっており、病期や組織型も様々であり興味深い結果が得られる可能性が高く、条件が整い次第すぐに解析を始める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き腹水中のエクソソームを回収し内在する候補miRNAの測定を行い、バイオマーカーおよび予後・予知因子としての意義を検討する。内容としては、①患者腹水中の候補miRNAについてRealtime PCRやDropletDigital PCR(ddPCR)を用いたmiRNA発現の定量化を行う。②定量したmiRNAについて、臨床病期や組織型、抗がん剤や化学療法の有無、などの臨床情報を加味した検討を行う。以上の結果から候補miRNAが卵巣癌のバイオマーカーおよび予後・予知因子となる可能性を検討する。具体的にはstageと候補miRNAの発現量の変化や、抗がん剤適応患者さんにおける奏効率による候補miRNAの発現量の変化を抽出しそれぞれの意義を検討する。③卵巣癌細胞株と腹膜を構成する中皮細胞株を対象としてmiR574-3P抑制エクソソームの影響を明らかにする。この結果から卵巣癌細胞の細胞増殖抑制や浸潤能の減少が確認されれば、候補miRNAを抑制したエクソソームがオートクライン型の増殖・浸潤抑制因子として作用することが示唆される。さらに、中皮細胞の増殖やアポトーシス減少が認められれば、腹膜を構成している中皮細胞の減少が抑えられることで腹膜の隙間がなくなり、腫瘍細胞の浸潤を防ぐ。という新規の卵巣癌の浸潤抑制機構の解明が示唆される。
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Causes of Carryover |
【理由】腹水からのエクソソーム回収や内在miRNA解析の条件検討に時間がかかり、2020年度予定であった「卵巣癌細胞株と腹膜を構成する中皮細胞株を対象としてmiR574-3P抑制エクソソームの影響を明らかにする」に着手できず、中皮細胞や用の候補因子抑制エクソソーム作成のための試薬や消耗品を購入しなかったため。 【使用計画】本年度の差額は2020年度予定であった「卵巣癌細胞株と腹膜を構成する中皮細胞株を対象としてmiR574-3P抑制エクソソームの影響を明らかにする」を引き続き行うための試薬購入や解析装置の使用料として使用する。また次年度計画予定の「人工腹膜モデルを用いたエクソソーム内在miR574-3Pによる卵巣癌細胞の増殖・浸潤能の検討」を遂行するための人工腹膜作成に関する試薬や解析試薬、消耗品購入のために使用する。
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Research Products
(2 results)