2019 Fiscal Year Research-status Report
The role of cGAS-STING pathway in cancer maintenance and metastasis
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19K07759
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
上原 郁野 日本医科大学, 先端医学研究所, 助教 (50434139)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | cGAS-STING経路 / IFN-α/β / cancer stem cell |
Outline of Annual Research Achievements |
がん抑制遺伝子p53を欠損したマウス線維芽細胞(MEF)が、DNA損傷刺激時に野生型より多くのI型IFNを産生するメカニズムの解明を試みた。まずp53欠損MEFは、通常状態でも野生型と比較して、細胞質DNA(クロマチン由来のDNAだけではなくミトコンドリアDNAも含む)の含有量が多いことがdsDNA assay kit実験でわかった。さらに、STINGの阻害剤H-151添加やSTING Knockdown(KD)その上流cGASのKDで、DNA損傷刺激時のTBK1の活性化やI型IFN及びその誘導遺伝子の発現が抑制された。よって、p53欠損MEFでは細胞質DNA量が多く、cGAS-STING経路が活性化しており、DNA損傷刺激でさらにcGAS-STING経路が活性化され、I型IFN産生していることが明らかになった。 がん細胞の維持におけるcGAS-STING経路の役割を調べるため、DNA損傷刺激時にI型IFNを産生し、がん幹細胞の指標となるsphereを形成する細胞をスクリーニングしたところ、肺がん細胞株HCC827細胞がこの条件を満たしていることがわかった。HCC827は通常状態でも、I型IFNをmRNAレベルで高く発現しており、H-151添加やSTING KD実験によって、I型IFNやIFN誘導遺伝子群の発現が抑制された。さらに、sphere形成中にH-151を添加したところ、sphereの大きさが非常に小さくなり、sphere 中のIFN誘導遺伝子群やがん幹細胞の維持に必要な遺伝子群の発現が減弱していた。さらに、HCC827細胞にDNA損傷刺激を与えた際に、HCC827細胞自体のPD-L1の発現が亢進し、H-151刺激によってこの発現が抑制されることがわかった。以上より実際のがん細胞でも、STINGががん化に関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p53欠損マウス線維芽細胞での、アドリアマイシンによるDNA損傷刺激時にI型IFNを産生するメカニズムが、cGAS-STING経路を介していることを、STING knockdown(KD)だけではなく、cGASのKDやSTING阻害剤H-151を使用した実験でも明らかにした。また、その理由として、細胞質DNA含量が関与していることもわかった。 同様に、がん細胞株HCC827での実験でも、H-151添加やSTING KD実験によって、I型IFNやIFN誘導遺伝子群の発現が抑制された。H-151添加時には、がん幹細胞の指標となるsphereの形成が抑えられ、sphere 中でのIFN誘導遺伝子群(Isg15、IRF-7など)や幹細胞の維持に必要と思われる遺伝子群(Sox2、IL-6、IL-8、Glut3など)の発現低下が認められた。さらに、HCC827細胞ではDNA損傷刺激により、免疫チェックポイント分子PD-L1の発現が上昇し、H-151添加時にはこの発現が抑制されることもわかった。 よって、DNA損傷刺激時にはSTING経路を介してI型IFN発現が起こること、この時のI型IFNによりPD-L1誘導が起きること、がん幹細胞の維持に、STINGを介したシグナルが必要性であること等、STING経路が関与するがん細胞維持機構の一部メカニズムを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. cGAS-STING経路下流で発現する遺伝子群を網羅的に解析するために、p53欠損MEF及びHCC827細胞で、STING阻害剤H-151の有無でDNA損傷刺激した時のマイクロアレイ解析を行う。この結果をもとに、特にインターフェロン(IFN)が関与しているシグナルについて、より詳細なメカニズムの解明を試みる。 2. p53欠損MEFの実験で、細胞質DNAの量がcGAS-STING活性に影響を及ぼしていることがわかったので、この細胞質DNAのうち、クロマチン由来DNA量の詳細解析を行う。さらに、老化で見られるような細胞質DNA分解酵素の発現が関与するのかを、MEF及びがん細胞株で確認する。 3. 近年、IFN刺激により、Histon H3.3とH3K36me3が関与してtranscriptional memoryができ、自然免疫刺激時に、より早く多くのIFN誘導遺伝子群を発現できるシステムの存在が報告されている。このシステムがcGAS-STINGにより誘導されるIFN誘導遺伝子群の発現、及び元々IFNの発現が高いがん細胞株の維持にも関与しているかの確認を行う。 4. cGAS-STING経路やI型IFNの腫瘍細胞におけるin vivoでの作用を確認するために、C57BL6由来のがん細胞として、B16F10メラノーマ細胞と転移性肺がん細胞Lewis Lung Carcinoma (LLC)細胞について、I型IFN受容体(IFNAR1)やSTINGをそれぞれknockdown(KD)した細胞を作成し、野生型のマウス及びIFNAR1欠損マウスに皮下移植(B16F10)や尾静脈移植(LLC)し、皮下への腫瘍形成や肺への転移への影響を確認する。また、B16F10細胞及びLLCを野生型マウスに同様に移植し、継時的にH-151を投与した際の、腫瘍形成や肺への転移の影響を確認する。
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Causes of Carryover |
本年度の学会出張旅費は大学から支給された旅費を使用できたため、使用しなかった。 次年度は受託研究としてマイクロアレイ解析を計画しており、当初の予定よりも高額の費用がかかる予定である。さらに通常の実験結果解析などの研究業務に使用しているコンピューター(Mac)が購入後9年経過し、新規OSのアップデートの対応機種から外れてしまい使用しにくくなっているため、次年度に新規のコンピューターを購入する予定である。 そこで、本年度はできるだけ既存の試薬等を使用して実験を進め、使用金額を約半分に抑えて、次年度の繰越金として上記目的に使用予定である。
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Research Products
(1 results)