2020 Fiscal Year Research-status Report
社会的選好に基づく意思決定への他者視点取得の影響:fMRI・rTMSによる検証
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19K07807
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小川 昭利 順天堂大学, 医学部, 助教 (30374565)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的選好 / 意思決定 / 機能的磁気共鳴画像法 / 経頭蓋磁気刺激 / 機能的結合 / 安静時脳活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の主要実験となる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と繰り返し経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を組み合わせた実験を開始した。課題は昨年度の予備実験と同じ短縮版最後通牒ゲームを用いた。この課題では、分配の提案者が2つの分配オプションから選択を行い、応答者がそれを受諾するか拒否するかを決める。拒否すれば二者とも分配を受け取れない。被験者は応答者として参加した。rTMSには連続シータバースト刺激(cTBS)を用いた。刺激の対象は他者の心的状態の推定に関わる右側頭頭頂接合部(RTPJ)とした。実験順序の効果をカウンターバランスするため、被験者(6名)は、fMRI前半 -> cTBS -> fMRI後半、または、cTBS -> fMRI前半 -> (break) -> fMRI後半のいずれかの順序の実験に参加した。cTBSの効果は長くとも60分で消失するので、後者の実験ではfMRI後半の前にcTBSの効果が消失するまで休憩とした。このようにして、cTBSの効果がある場合とない場合の脳活動を計測し、安静時脳活動の計測と合わせて、脳活動と機能的結合を解析検討した。一般化線形混合モデルによる行動解析の結果、cTBS実施前は提案者の意図の効果が受諾率に有意に影響したのに対して、cTBSを実施すると提案者の意図の効果が受諾率に有意には影響しなかった。脳活動解析の結果、cTBSにより右上頭頂小葉と右背外側前頭前野(RDLPFC)の活動が抑制された。とくにRDLPFCは先行研究で報告されている脳領野と重複していた。そこで、RTPJとRDLPFCの安静時機能的結合を調べたところ、有意であることが分かった。これらのことは、RTPJへのcTBS実施が機能的結合のあるRDLPFCの脳活動を抑制して、行動選択(受諾)における提案者の意図の効果を抑制した、ということを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、社会的選好に基づく意思決定において、他者の意図が意思決定に与える影響とその脳内メカニズムをfMRI-rTMS実験により明らかにすることを目的としている。 本年度は、fMRIとrTMSを組み合わせた本研究の主要実験を開始した(実験課題は「研究実績の概要」を参照)。rTMSの対象は他者の心的状態の推定に関わる右側頭頭頂接合部(RTPJ)とした。結果、rTMSにより、提案者の意図が被験者の受諾率に与える影響が低下した。また、先行研究により示されている諾否の決定に関わる脳領野(RDLPFC)の活動が低下した。これらの結果は、RTPJで推定された提案者の意図がRDLPFCでの諾否の決定に影響することを示す。 実験実施が困難だった時期が長かったため、本年度予定していた前部前頭前野にrTMSを実施する実験まで至らなかった。 以上より、本研究課題は本年度に目指した内容からやや遅れていると考えている。新型コロナ感染予防を重視しつつ、fMRI-rTMS実験を来年度の早い時期に完了させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、主要実験であるfMRI-rTMS実験を開始した。令和3年度は、引き続きfMRI-rTMS実験を実施して、統計解析に十分なデータを取得する。行動データに関しては、一般化線形混合モデルを用いた解析に加えて計算論モデルを用いた解析を実施する。fMRIデータに関しては、コントラストを用いた解析に加えて、計算論モデルをベースとする解析を行う。これにより、脳活動の定量的な解析結果を示すことができる。以上の解析結果をまとめて、学会発表・論文投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染予防のために学会発表等の機会が著しく減ったため、旅費、学会参加費、英文校正費用を次年度に繰り越して使用する。また、実験実施が困難だった時期が長かったために余剰した消耗品費、謝金を次年度に使用する。
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Research Products
(10 results)