2021 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症発症メカニズムの解明と制御:コレステリルエステル蓄積からのアプローチ
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19K07861
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
惠 淑萍 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90337030)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フラジン / 脂質代謝 / 脂肪滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質の代謝障害は、糖尿病などの代謝性疾患および脂肪滴と密接に関連することが知られている。脂肪滴(lipid droplets, LD)は、脂質代謝を調節するための新しいターゲットと見なされている。食事介入栄養補助食品は、代謝性疾患の治療に安全で長期的な有益な効果をもたらす。フラジンは主に発酵食品に含まれる食事由来の機能性成分であり、その脂質代謝改善機能に関する研究が報告されていない。
令和3年度は、HK-2細胞(健常成人腎臓由来の近位尿細管上皮細胞株)において、フラジンの脂質に対する細胞レベルと細胞小器官レベルの両方での調節を調べ、フラジンによる脂質代謝改善効果を発見した。 フラジンは、HK-2細胞中のtriglyceride (TG) 含有量を低下させ、TGプロファイルをチェンジさせ、脂肪酸組成の特性を改善した。また、フラジンはLDに対しても多次元の調節効果を示した。LD染色により、フラジンが効率的にLDの中性脂肪含有量を17.4~53.9%削減し、LDサイズを10.0~35.3%縮小した。ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析でも、フラジンがLD中TG含量の減少およびLDサイズの縮小効果を示した。そのメカニズムを解明するために脂質代謝に関連する遺伝子発現を調べたところ、フラジンは、脂肪分解酵素であるATGL のmRNA発現量を増加させ、脂肪酸の合成酵素であるACC、FAS、およびSCD-1のmRNA発現量を低下させたことがわかった。フラジンには脂質分解の促進と脂質生成の阻害作用があることを明らかにした。なお、フラジンはHK-2細胞およびらミトコンドリア保護機能を有することも示唆した。
脂質代謝の改善および細胞保護機能を有するフラジンは、有望な栄養補助食品の機能性成分として糖尿病腎症の予防と治療に役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染防止のため、実験室を利用できる時間が制限された。そのため、十分な実験ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病性腎症は脂肪蓄積と酸化が重要な役割を果たすことが知られている。研究代表者の研究チームは、フラジンがHK-2細胞(健常成人腎臓由来の近位尿細管上皮細胞株)において脂質代謝の改善および細胞保護機能を有することを明らかにした。今後はHK-2細胞を用いて、フラジンの細胞保護機能のメカニズムおよび腎臓病発症を制御する可能性を検討していく。
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Causes of Carryover |
1.腎臓由来の近位尿細管上皮細胞培養実験のために、細胞、培地、血清、プラスチック製品が必要である。 2.カルジオリピン(CL)やコレステリルエステルや他の脂質の質量分析のために有機溶媒と質量分析計の校正スタンダードおよびカラムなどを購入する必要がある。 3.フラジンの細胞保護機能のメカニズムを調べるために、pureフラジンの化学合成や精製に必要な試薬等が必要である。
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