2019 Fiscal Year Research-status Report
硝子体疾患における眼内Tリンパ球6-color flow cytometry解析
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19K07942
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
稲葉 亨 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60203204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 健児 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (00457988)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 硝子体疾患 / 硝子体混濁 / 眼内Tリンパ球 / フローサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
<対象> 硝子体混濁のため、当院眼科で硝子体切除術を受けた患者の眼内還流液を濃縮・洗浄して眼内リンパ球浮遊液を作成し、CD4/CD8比、B細胞率、さらにはCD4およびCD8陽性Tリンパ球分画におけるCD25, CD27, CD28, CD45RA, CD57, CD127, CD197, CD279の発現を6-color FCMで解析した。同一患者の手術当日の末梢血Tリンパ球についても同様の解析を行い、眼内リンパ球との分画パターンを比較した。また、眼内各種サイトカイン濃度との関連も検討した。 <結果> 1)サルコイドーシスでは硝子体Tリンパ球CD4/CD8比>3.5であり、硝子体CD4+Tリンパ球は末梢血に比べてcentral memory T、effector memory TおよびT regの比率が高かった。CD8については絶対数が少ないが、末梢血に比べてcentral memory T, effector memory Tの比率が高く、terminal effectorが低かった。 2)B細胞性眼内リンパ腫と診断した症例では眼内IL-10/IL-6比は平均47.7であった。IL-10/IL-6比≧1.0を基準とすると、リンパ腫の診断における感度は72.2%であった。従来報告されている感度より低く、FCMとの組み合わせ(B細胞比率≧5%、表面免疫グロブリン軽鎖κ/λ比偏重あり)で診断することで、診断精度が向上するものと考えられた。なお、FCMで得られた項目との多変量解析では、IL-10とCD4に正の相関、CD8に負の相関がみられたが、症例を増やして確認する必要がある。B細胞比率(CD19あるいはCD20)とIL-10の濃度には相関は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年2月までは比較的コンスタントに該当症例を解析することが出来たが、その後、新型コロナウイルス感染症の流行により、本院における待機的手術実施枠に制限がかかったため、3月以降は事実上、該当症例の手術が停止されている。このため2019年度は「やや遅れている」。 2020年4月末現在も手術が通常通り再開される目処はたっておらず、今後しばらくは生命的危機のある症例(悪性リンパ腫等)のみが特例的に手術対象とされる状況が続くと思われるが、サルコイドーシスに関しては徐々に蓄積できてきており、今後症例数を増やして臨床経過との解析を行う予定である。ウイルス性内眼炎についてはサルコイドーシスと比べて症例数が少ない疾患であり、3年目に解析を予定する。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症収束後に通常診療体制が再開されるまでは、対象症例が眼内悪性リンパ腫のみに限定されるのはやむを得ないと考える。サルコイドーシスについては症例数を増やしてTregが術前の炎症の程度や中心窩網膜厚(黄斑浮腫)と相関があるかどうかを見ることで、ぶどう膜炎における眼炎症制御の役割を検討する。またTregの比率によって術後経過に違いがあるのかどうか検討する予定である。 眼内リンパ腫では、IL-10は腫瘍化したB細胞から産生されると考えられているが、今年度の結果においてCD4陽性T細胞との相関も見られた。反応性Tリンパ球も多く、Tリンパ球との関係性について症例を増やして検討する。ウイルス性内眼炎については、サルコイドーシス等と比べて症例数が少ない疾患であるが、CD4/CD8比と臨床経過との解析には過去の症例も使用可能であり計画の変更なく、症例を徐々に増やして3年目の解析を目指す。
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Causes of Carryover |
当該助成金が交付される以前に購入していた試薬類等が残っていたため、2019年度分の交付金に174,555円の残額が生じた。ただし抗体試薬は有効期限の問題もあり使用可能な残量は少ない。また新型コロナウイルス感染流行による一時的な診療制限も解除のめどが立ち、硝子体手術症例が回復すると思われる。このため昨年度より抗体試薬の使用量が増えるため、昨年度の残額を2020年度の抗体試薬代として使用する予定である。
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