2020 Fiscal Year Research-status Report
ATTR脳アミロイドアンギオパチーの自然史・病態解明と治療法開発のための基盤構築
Project/Area Number |
19K07959
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
関島 良樹 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60322715)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アミロイドーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は2019年度に引きつづき,遺伝性患ATTRアミロイドーシス(家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における中枢神経症状発現の詳細な情報収集・診療を行なった.また,脳へのアミロイド沈着を定量するためのPittsburgh compound-BをリガンドとしたPET検査(PiB-PET)を実施した.さらにこのPiB-PETを用いて,中枢神経へのATTRアミロイド沈着のモニタリングを試みた. まず,脳へのATTRアミロイド沈着を正確に評価するために,患者のPET検査結果を正常者から求めたデータベースと比較し統計学的に処理し,ATTRアミロイド沈着部位を明確に可視化することに成功した.またこの画像を用いて,前頭葉,側頭葉,後頭葉,頭頂葉,小脳に合計10カ所の関心領域を自動設定し,この領域におけるstandardized uptake value ratio (SUVR)を定量することにより,アミロイド沈着量を客観的に定量することに成功した.この方法を用いて,これまで解析した合計48検査の画像・統計解析を行っているが,発症からの期間が長くなるにつれて脳へのATTRアミロイド沈着が増加する傾向を認めている.9名の患者においては,3~5年のインターバルを置いて複数回PiB-PETを実施し,2名では明らかなアミロイド沈着の増加を認めた. 臨床的には,中枢神経症状としてtransient focal neurological episodes (TFNEs)と呼ばれる数分から数時間持続する一過性の神経症状(半側の感覚障害・麻痺,失語,異常行動など)を呈している例が圧倒的に多かった.TFNEsの病態として,てんかん類似の神経細胞の異常興奮が考えられたため,TFNEsを頻回に繰り返す患者3名に対して,カルバマゼピンで治療したところ,発作頻度が著明に抑制されることが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように,遺伝性患ATTRアミロイドーシス患者における中枢神経症状発現の自然歴およびPiB-PETのデータが順調に蓄積されている. また,PiB-PET画像の脳へのATTRアミロイドーシス沈着を正常脳データベースとの比較により客観的に評価することにも成功している. さらに,脳ATTRアミロイドーシスの中枢神経症状に対するカルバマゼピンの治療の有効性のデータも蓄積されつつある.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,3年~5年のインターバルを空けてフォローアップのPiB-PETを実施する患者数を増やす.また,正常者脳データベースとの比較のデータ解析を完遂し,遺伝性患ATTRアミロイドーシスにおける脳アミロイドアンギオパチーのバイオマーカーとしての有用性を明らかにする.さらに,遺伝性患ATTRアミロイドーシスにおける脳アミロイドアンギオパチーに対する抗てんかん薬の有効性を検証する.
|
Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に物品の購入ができたため、次年度使用が生じた。 次年度使用額は、2021年度請求額と合わせてPiB-PETの経費及び消耗品費として使用する予定である。
|