2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス(テネイシンC)による放射線肺障害の病態解明とその臨床応用
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19K08226
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
高田 彰憲 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80727066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野本 由人 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10252363)
俵 功 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80378380)
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (00242967)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線肺臓炎 / 肺線維症 / テネイシンC |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌などに対する放射線治療においては、正常肺に照射されることにより、照射後に放射線肺臓炎・肺線維症が発生することが多いが、同じ線量であっても症状や程度に個人差がみられ、その発症や重症度の予測は困難である。一方、細胞外マトリックス分子の一つテネイシンC(TNC)は、組織傷害とその後の組織リモデリングに大きく関与し、その血中濃度が病変進行を評価し予後予測に有用なバイオマーカーとして有用であることが明らかになってきた。本研究では、放射線肺臓炎・肺線維症を組織リモデリングとして捉え、TNC の血中濃度と組織発現及び放射炎肺臓炎・肺線維症の程度との相関を明らかにし、TNCのバイオマーカーとしての有用性を検証し、放射線治療計画の最適化、放射線肺傷害に対する早期の治療介入の指標として用いることを目的とする。 又、我々のpilot study で得られた人の放射線肺臓炎病態における臨床的仮説、すなわち血中TNC 値が放射線肺臓炎の経過と相関することを臨床および動物実験により検証する。臨床的検討としては胸部に放射線照射を行った患者の血中TNC 値を経時的に測定し、放射線肺臓炎・肺線維症の発症および重症度との相関関係について解析し、TNC のバイオマーカーとしての有用性を明らかとする。さらにマウスモデルによって、放射線照射による肺臓炎の進行に伴いTNCが肺組織で発現誘導され、組織理モデリングの進行が血中レベルに反映されることを確認するシミュレーション実験を行う。さらに、TNCノックアウトマウスの放射線傷害と組織リモデリングを野生型と対比し、放射線肺臓炎の病変進行におけるTNC の役割を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉛ブロックを用いてマウス肺部分照射用のデバイスを作成し、週齢12週のBALB/cマウスの右上肺局所に30Gy/1frの照射を行った。照射後のマウスは、①同一個体で経時的な肺CT撮影を行う群(n=2)、②経時的にCT撮影と肺病理標本の所見を比較する群(n=3)、の2群に分けた。CT撮影は1.5~2.0%イソフルラン吸入麻酔下で撮影し、呼吸同期法で画像を再構成した。肺組織はホルマリン固定後アルコール置換しパラフィン切片を作成。肺組織に関してはH-E染色、Sirius Red(S-R)染色、炎症や組織リモデリングへの関与が知られているTenascin C(TNC)の免疫染色をそれぞれ行った。
放射線肺臓炎の解析をする為、マウスを使用した放射線肺臓炎モデルを作成した。 結果:同一個体で経時的な肺CT撮影を行った群 イソフルラン吸入麻酔下での撮影と呼吸同期法での画像再構成で、十分評価可能な肺CT画像の撮影が可能だった。放射線照射後、12週、16週、20週、24週、27週、32週でCT撮影を行った。放射線照射後16週まではCTで明らかな変化は認めなかったが、20週で照射部に一致した右肺に局所的なすりガラス影が出現し放射線肺臓炎を認めた。24週、27週で肺臓炎の範囲が拡大し濃度も上昇し、32週では同部位の収縮性変化を認め肺線維症がみられた。32週までのCT撮影で左肺に変化は認めず、上記デバイスで右肺への局所照射が行えていることが確認された。以上より20週で放射線肺臓炎の所見が出現しその後徐々に拡大し32週頃から肺線維症に移行していくと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、CT画像の所見と、病理学的所見の比較を行っていく。 放射線照射後12週、16週、20週、24週、28週、36週、44週でCT撮影を行っており、同じポイントで肺組織切片の作成を行う。このサンプルを使用し、病理で炎症細胞の浸潤、S-R染色では血管周囲にコラーゲンが沈着を確認し、さらに、TNCの発現も観察していく。どの時期に炎症のピークがあり、またコラーゲンの沈着の出現時期がいつなのかを解明する。CTでは放射線治療後20週を越えると、徐々に線維化を形成していく事が予想された。 また放射線治療による線維化にTNCがどのようにかかわっているのかをTNCにおいて野生型とノックアウトマウスを使い実験を進める必要がある。さらにTNCの発現に関わる細胞が何であるかについても、解明していく予定。
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Causes of Carryover |
本年度は基礎実験のみであった。実験を進めるにあたり、必要なTNCノックアウトマウスや野生型マウスを低額で取得・利用する事ができた。また実験の結果について、学会発表や論文作成までには至らなかった。次年度では、今後の研究の推進方策として、CT画像の所見と、病理学的所見の比較していく。放射線照射後、CT撮影をし、同じポイントで肺組織切片の作成を行う。そのため、Balb/cマウスの他、TNCマウス、実験用の生理食塩水や固定用のアルコール、ホルムアルデヒド、薬剤、注射器、針などさらに継続して実験用の消耗品へあてる。その他、CT、病理標本で蓄積したデータを一括して管理する為のハードディスクが必要になる。今回、日本病理学会や日本放射線腫瘍学会への演題を登録しており、そこでの経費としても使用する予定。
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