2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス(テネイシンC)による放射線肺障害の病態解明とその臨床応用
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19K08226
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
高田 彰憲 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80727066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野本 由人 三重大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (10252363)
俵 功 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80378380)
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00242967)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線肺臓炎 / 肺線維症 / テネイシンC |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌や食道癌などの癌治療の一環として肺に放射線照射がなされるが、照射の数か月後に照射領域を中心に放射線肺臓炎・肺線維症が発生することが多く、臨床上しばしば問題となる。間質性肺炎や特発性肺線維症に対する診断マーカーとしては、KL-6やSP-Dなどが用いられているが、放射線治療後の放射線肺臓炎・肺線維症の予測はこれらのマーカーでは困難である。他臓器では組織リモデリングの進行の評価するマーカーとしてMatricellular proteinsが注目されている。我々のグループは、このMatricellular proteinsの一つであるTNCが心筋梗塞、心不全などにおける心室リモデリング、肝線維症、川崎病冠動脈瘤などで病変活動性を反映し、治療法の決定に有用であることを明らかにした。また、特発性器質化肺炎、特発性間質性肺炎ではTNC の血中濃度が高いことも報告されている。放射線照射は肺組織にoxidative stress を引き起こすことが知られているが、動物実験やin vitro の研究から、oxidative stress はTNC 発現を強く誘導し肺線維症を進行させる可能性が示唆されている。肺の放射線治療においても、照射によって肺組織が傷害された後、リモデリングが進行していく過程の肺組織でTNCが発現し、血中のTNC 濃度 が上昇することが予測される。肺癌などに対する放射線治療後に生じる放射線肺臓炎・肺線維症は、同じ線量であっても症状や程度に個人差がみられ、その発症や重症度の予測は困難である。本研究では、放射線肺臓炎・肺線維症を組織リモデリングとして捉え、TNC の血中濃度と組織発現及び放射炎肺臓炎・肺線維症の程度との相関を明らかにし、TNCのバイオマーカーとしての有用性を検証し、放射線治療計画の最適化、放射線肺傷害に対する早期の治療介入の指標として用いることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成果1:pilot study として、肺癌の放射線治療患者7 例に対し、経時的に血中TNC濃度の測定を行い、放射線肺臓炎陰影が最も強くなる時期にかけて血中TNC 濃度が上昇し、その後肺臓炎陰影が収束するにつれて低下するという結果を得ている。 成果2:肺癌で照射後に手術が行われた症例(Archival tissue samples)において、切除肺の照射領域においてTNCが高発現していることを確認している。 成果3:マウスの肺の部分照射モデルの報告は極めて少ない。今回肺の一部に照射可能なモデルを作成し、その方法を確立した。マウスの片肺に直径12㎜、20Gy単回照射を行う3㎜の厚さの鉛のデバイスを作製。これまで放射線照射後、1,2、4、8週経過したマウスの心臓、肺の検体と、同時期TNCの濃度Dateをとるため、血清を保存・管理している。
実験の進捗状況がやや遅れた理由に関して、コロナ感染症拡大防止の為、実験室の利用制限もあり、一定期間、動物実験を進める事が困難であった。現在は実験を再開し、再現性の確認を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの知見からえられたデータをまとめて学会で発表を行った。マウスに対して肺への部分照射(30Gy)をしている。定期的にCT画像を撮影し、同日マウスで経時的な肺炎像の変化について評価する群と、照射後一定期間で剖検し、CT画像と病理変化を比較する群の2つに分けて評価した。その結果、人間に放射線性肺臓炎、肺線維症発症と同様の時期に変化している事が分かった。放射線治療後16週頃から肺炎像が出現し、その後32週頃から肺線維症を示唆する肺萎縮を認める。CT画像と病理画像はほぼ一致しており、さらに線維化に関しては軽症~重症へ経時的に重症度が増してくる事が指摘された。さらにデータを解析し、画像データ(CTによる肺臓炎と肺線維症の評価)と病理学的な知見(放射線性肺線維症)から線維化のメカニズムについて論文発表する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症拡大防止の為、予定していた実験を進める事が困難であった事、国際学会や国内学会での発表ができなかった事などが大きな原因である。今後、実験の再開を予定しており、マウスの購入や病理学的解析に用いる消耗品の購入に使用する予定である。また、論文作成の為、英文校正費、投稿費等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)