2020 Fiscal Year Research-status Report
Glutamate excitotoxicity in pediatric neurological diseases evaluated with MR spectroscopy
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19K08237
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
高梨 潤一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00302555)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MRスペクトロスコピー / グルタミン酸毒性 / けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD) / 軽症興奮毒性型急性脳症(MEEX) |
Outline of Annual Research Achievements |
グルタミン酸は中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であり、記憶や学習機能に重要な役割を果たしている。一方で、過剰に放出されたシナプス内グルタミン酸は、神経細胞障害(グルタミン酸興奮毒性)を引き起こし、種々の神経疾患の一因と考えられている。髙梨らは日本の小児に特有かつ最も高頻度な(約200例/年)急性脳症のサブタイプ「けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)に興奮毒性が関与することを報告し、疾患概念を確立してきた。令和元年度、AESDの予後予測におけるMRSの有用性について検討する中で、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸毒性に拮抗作用を有するN-acetyl-aspartyl-glutamate(NAAG)などの小児期正常値を設定する必要性が認識された。令和2年度は、これら脳代謝物質の経年的な変化を解析し、NAAGが経年的に増加する一方で、Gln、タウリン(Tau)は経年的に減少することを見出した。これらの成果は2020 International Symposium on the Pathophysiology of Developmental and Epileptic Encephalopathyにて報告した。 また、低ナトリウム血症性脳症におけるMRSの検討からmyo-inositol, choline,NAAの低下,Glnの上昇が認められた。低Na血症による浸透圧性細胞浮腫のみならず、興奮毒性が中枢神経病態に関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目的とした「興奮毒性型脳症」は、典型的AESD, 軽症型MEEXを含めた広い疾患概念であることを確立しえた。AESDの重症型、AESDとMEEXの中間型の存在も示唆されており、さらなる検討を継続する。 小児期の脳代謝物の経年的変化については論文作成中である。第57回日本小児放射線学会(令和3年6月開催予定)において教育講演「小児急性脳症の臨床・画像最新情報」で本研究成果を講演予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
小児の経年的脳代謝物の変化をMRSでとらえることが可能となり、MRSがAESDの診断・予後予測に有用であることが示された。低酸素性虚血性脳症(蘇生後脳症)においてもグルタミン酸興奮毒性の関与が想定されることから、本症患児の脳代謝をMRSで解析しその脳病態を解明する。 また、いまだに病態の不明な小児神経疾患・代謝性疾患におけるMRSの検討から、興奮毒性を含めた病態を解明する。
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Causes of Carryover |
令和2年10月に予定されていた43th European Society of Neuroradiology(ESNR)annual meetingにて、本研究成果を発表する予定であった。新型コロナウイルス感染症のため渡航が困難となり参加を見送った。そのため本学会のために計上していた旅費・学会参加費が不要となった。令和3年度は、MRSならびにグルタミン酸興奮毒性に関する最先端の情報収集、研究者との討論のため44th ESNRに本研究の成果発表を予定し、そのための参加費・旅費支出を計上している。物品費としてMRS解析PCの購入、論文校正、オープンアクセス経費などの支出などを予定している。
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