2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of treatment for autism spectrum disorder relating with oxytocin and miRNA
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19K08258
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山形 崇倫 自治医科大学, 医学部, 教授 (00239857)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(ASD)および関連疾患のRett症候群/MECP2重複症候群の病因、病態の解明と、治療法開発を目的とする。 (1) 病因解明研究として、aCGH解析、名古屋市立大と共同研究でASD候補遺伝子のパネル解析を実施、候補遺伝子解析中である。その一つとして、概日リズムに関連するPER3について解析した。候補遺伝子未同定患者のエクソーム解析で、2例で複数の候補遺伝子が検出され絞り込み中である。aCGHによりmiR935を含む領域のde Novoの重複患者を検出し、患者細胞でmiR935の発現調節を受ける遺伝子の発現低下を確認した。ASDに関与する可能性が考えられ、他の患者で変異解析や作用解析を進めている。これらは、病態解明、治療候補分子の抽出に繋がる重要な結果である。 (2) 治療法開発研究 ① オキシトシン神経系を賦活する治療候補薬の臨床研究: 臨床研究の実施手順、評価法などの実施方法を決定し、特定臨床研究に対応した手順を作成し、実施承認を得た。患者さんの承諾も得られ、開始している。今後の症例の蓄積により、治療効果が示されることが期待される。 ② miRNAを用いた遺伝子治療法開発: 治療法開発研究対象として、Rett症候群の病因遺伝子MECP2を選択した。MECP2は機能低下でRett症候群を、重複でMECP2重複症候群を発症する。MECP2は、多数のmiRNAにより発現制御され、それらは、Rett症候群/MECP2重複症候群の治療候補分子である。それらのmiRNAあるいはRNAi等を含め治療候補分子を策定した。また、MECP2を組み込んだAAV9ベクターを作製中である。それらを用いた培養細胞での解析のため、Rett症候群とMECP2重複症候群患者のiPS細胞や線維芽細胞を確立した。解析準備が整えられてきており、解析が進展できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 病因解明研究 aCGH、ASD候補遺伝子のパネル解析、エクソーム解析を行い、候補遺伝子が複数挙げられてきており、それらの疾患との関連解析を進めている。解析患者数は少ないが、有望な遺伝子もあり、新たな候補遺伝子の同定が期待される。その中で、概日リズムに関連するPER3の変異が検出された患者がいたことから解析し、ASDに関連する可能性が考えられた。また、miRNAを対象に疾患関連性を、既解析結果の再確認および新たな解析を実施した。現時点で、miR935のみが疾患との関連性が考えられている。想定よりは少ないが、患者培養細胞でmiR935により発現調節されている遺伝子の発現が変化していることが確認され、疾患と関連する可能性が高い。miR935の疾患との関連性を確定するため、他の患者での変化を確認している。また、頻度は低いかもしれないが、miRNAがASDに関連している可能性が高いことが示され、他のmiRNAの検出をさらに進める。 (2) 治療法開発研究 オキシトシン神経系を賦活する治療候補薬の臨床研究として、特定臨床研究として実施承認を得て、被験者のリクルートを開始した。開始が遅れ、現時点ではまだ1名のみの実施で、2名は除外基準に該当して実施不可能であった。さらに2名の患者さんの承諾も得られ、開始予定である。この課題のみやや遅れている。 治療法開発研究の一つとして、Rett症候群の病因遺伝子MECP2を選択し、miRNAを用いた遺伝子治療法開発研究を計画した。今年度は、miRNAあるいはRNAi等の治療候補分子の策定、AAV9-MECP2ベクター作製、Rett症候群とMECP2重複症候群患者のiPS細胞や線維芽細胞の確立など、解析準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 病因解明研究 aCGH、ASD候補遺伝子のパネル解析、エクソーム解析は、症例数を増やし、解析を継続する。現在抽出されている、および今後同定されることが期待される候概日リズム関連、シナプス関連等の補遺伝子や、miRNAについて、他の患者での変異解析、培養細胞を用いた機能解析等により、関連性を確定していく。頻度は低いかもしれないが、miRNAがASDに関連している可能性が示され、他のmiRNAの検出をさらに進めていく。 (2) 治療法開発研究 オキシトシン神経系を賦活する治療候補薬の臨床研究では、被験者のリクルートを促進し、軌道に乗せていく。 ASDの治療法解析のモデルとなる、Rett症候群/MECP2重複症候群の治療法解析では、発現低下、増加とも機能障害を起こすため、一定の発現レベルにとどめなければならない。そのために、多様な手法を検討する必要がある。まず、培養細胞を用いて、治療効果確認のための発現レベルの確認方法の確立を行う。Rett症候群では、AAVで遺伝子導入し発現レベルの確認、RNAiで発現調節等を検討する。MECP2重複症候群では、miRNAを用いて遺伝子発現調節を試みる。プロモーターの調整による発現制御も検討する。これらの方法を組み合わせて、適切な治療法を開発する。されに、ゲノム編集技術を応用した、ターゲット配列に結合するが切断しないdCAS9を用い、プロモーター制御によるMECP2の発現増強、あるいは抑制を試みる。これらの方法でRett症候群/MECP2重複症候群の治療法が開発されれば、ASDを含む他の疾患の治療法開発にも繋がる。
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