2019 Fiscal Year Research-status Report
思春期若年成人白血病のクロモスリプシスによる悪性化機構解明とゲノム医療への応用
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19K08310
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
川村 眞智子 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 血液内科, 副部長 (80450592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 安比古 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, その他 (50373387)
小林 泰文 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 血液内科, 科長(兼)部長 (50455375)
春田 雅之 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 研究員 (80392190)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 白血病 / クロモスリプシス / SNPアレイ / PNA-FISH |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:クロモスリプシスが関わるがんは難治であり、発症機序は未だ不明である。全ゲノムシークエンス(WGS)で難治性白血病にクロモスリプシスを検出し、クロモスリプシス関連白血病の細胞形態、染色体、遺伝子レベルでの特徴を明らかにするとともに、WGSによらない同白血病のスクリーニング法を開発する。 方法:①クロモスリプシス(染色体破砕;chromothripsis)は近年、次世代シークエンス(NGS)によって新たに発見された発がん機構で、難治性白血病にみられるがその発症機序は不明である。②クロモスリプシス関連白血病検体において、ゲノム損傷修復遺伝子、細胞分裂時の染色体分配に関わる遺伝子の異常を中心に網羅的遺伝子解析を行い、関連を明らかにする。 ③クロモスリプシスを示唆する細胞小核を持つ白血病を対象に、FISH、Peptide nucleic acid (PNA)-FISH,SNP array、核型を分析し、NGSの結果 (全ゲノムシークエンス、RNAシークエンス)と照合し、クロモスリプシス関連白血病の診断法を開発する。 結果:61症例の白血病(ALL, MDS/AML)に関してSNP arrayを行い、PNA-FISHを27症例で、RNA-シークエンスを12例で、WGS解析を4例で行った。SNP arrayからクロモスリプシスパターンを示す症例が7例、その1例はdmin (double minutes)で、それ以外の2例のdminは、全例MYCのある8q24.21に増幅を呈し、17pが欠失する共通のパターンを呈した。またTP53遺伝子変異が2/3例にあり、金子らが詳細に報告した1例と類似していた。さらに、二次性AMLに、新規NUP98融合遺伝子を、難治性T細胞性ALLに、新規BCL11B融合遺伝子を検出し、クロモスリプシスとの関連を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BCL11B融合遺伝子に関しては、全長cDNA増幅に時間がかかっており、機能解析が少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
二次性AMLの新規NUP98融合遺伝子、難治性T細胞性ALLの新規BCL11B融合遺伝子は、思春期・若年成人;Adolescent and Young Adults; AYA (15~40歳未満)世代の症例であり、RNAシークエンス、WGSを行い詳細に解析中である。 クロモスリプシスを疑ったdminを呈した3症例は、8q24.21に増幅がみられる一群で、染色体17番の欠失がある類似したSNPアレイを示していた。金子らの報告した1例は、FISHでdmin中にMYCなど4種類の遺伝子が確認されたが,定量RT-PCRではTRIB1遺伝子のみが高発現していた (Sugawara et al., Genes Chromosomes Cancer 50, 535, 2011)。dminの存在はクロモスリプシスの重要な過程の一つと報告されている。また同部位の増幅症例で、PVT1(長鎖非コードRNA)遺伝子と、MYC遺伝子やTP53遺伝子との関連も報告され注目されており、同様な病態を呈する一群として、クロモスリプシスとの関連性を明らかにするため、さらなる解析を行う。 引き続き、クロモスリプシス疑い症例について解析をすすめ、新規融合遺伝子の機能解析と融合遺伝子とクロモスリプシスの相互関係、両者がどのように難治性白血病の発生と関連しているのかを明らかにする。 また、PNA-FISHは、動原体の異常を検出することが可能である。クロモスリプシスはテロメアの異常が発端になっている例があり、可視化できる有用性がある。白血病において動原体の異常が染色体の数的異常と関連があることが知られており、染色体の複雑核型とも関連がある。クロモスリプシスのスクリーニング法として、小核の検出、marker染色体やPNA-FISHによる動原体の異常との関連を検討する。
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Causes of Carryover |
分担研究者の配慮で、年度末の支払い不足について注文を保留にしていたため生じた。
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Research Products
(7 results)