2019 Fiscal Year Research-status Report
エクソソーム内包タンパク活性化機構に着目した胆道がん併用療法の確立
Project/Area Number |
19K08365
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 昌昭 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20422602)
小林 隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胆管がん / エクソソーム / ゲムシタビン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①胆道がんのエクソソームにおけるmTOR活性化機構を検討し、②mTOR以外のエクソソーム内部蛋白の活性化状態についても網羅的な解析を行い、エクソソームに拮抗する医薬品を用いた併用療法を確立することである。当初、本研究を進めるにあたって以下の実験計画を立案した。①胆道がんのエクソソーム内部におけるmTOR活性化の原因・機序を探る目的で、培養胆道がん細胞株にmTORシグナル阻害剤やmTOR siRNAを添加した後に、抗がん剤を投与してエクソソーム分泌量・活性を解析する。 ②リン酸化抗体アレイを用いて、抗がん剤で活性化される胆道がんのエクソソーム内部蛋白を網羅的に解析する。 本年度においては、上記の実験計画①を主に行った。具体的には、胆道がん細胞(胆管がんHuCCT1、胆のうがんNOZ)に抗がん剤(ゲムシタビン、シスプラチン)を投与し、エクソソーム量・活性(増殖/転移促進)を解析した。その結果、胆管がんのエクソソーム分泌量は抗がん剤刺激で有意に増加するするものの、正常コントロールの1.7-3倍程度にとどまることが明らかになった。一方、エクソソームの生物活性(細胞遊走能の促進・細胞増殖能の促進)は、抗がん剤刺激後では著明に増強していることが分かった。正常コントロールのがん細胞から分泌されるエクソソームは、僅かな細胞に対する遊走刺激しか示さないが(3/500細胞数)、抗がん剤刺激した細胞から得られたエクソソームは、約10数倍の細胞遊走能(20-35/500細胞数)を有していた。この理由をさぐるためにエクソソーム蛋白のリン酸化蛋白候補のウエスタン・ブロット解析を行った結果、予備実験で既に推測していたmTOR経路の活性化が関与していることが分かった。 なお、上述の実験計画②は次年度以降に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、【研究実績の概要】に記した、実験計画①の施行である。胆道がん細胞(胆管がんHuCCT1、胆のうがんNOZ)に抗がん剤ゲムシタビン、シスプラチンを投与した結果から、胆管がんのエクソソーム分泌量は抗がん剤刺激で有意に増加するするものの著増レベルには達しない、という新知見を得ることができた。その一方で、エクソソームの生物活性(細胞遊走能の促進・細胞増殖能の促進)は、抗がん剤刺激後では10数倍以上の著明なレベルで増強していることも初めて明らかにすることができた。さらにエクソソーム蛋白のリン酸化蛋白候補のウエスタン・ブロット解析によって、予備実験で既に推測していたmTOR経路の活性化が関与していることが分かった。本研究では、mTOR以外の幾つかのシグナル経路も解析したが、明らかな変動を見いだすことはできなかった。以上の実験の進展によって抗がん剤-胆管がんのエクソソーム-mTORシグナル経路の密接な関係を明確にすることができたため、本研究の本来の目的である、「胆管がんの薬剤耐性機構の解明」に一歩近づくことが容易になったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験結果から、エクソソームのmTOR活性化が、胆管がんの薬剤耐性に深く関与していることが明らかになった。そこで次年度以降は、今度はどうすれば薬剤耐性を克服できるかという目標を掲げ、mTORに着目した、エクソソーム拮抗剤を見いだす予定である。 i) まずはmTOR阻害剤による効果を確認する目的で、胆管がん細胞株HuCCT1や胆のうがんNOZに対してmTOR阻害薬(ラパマイシン)と抗がん剤(ゲムシタビンetc.)による併用療法を行い、エクソソーム分泌量/内部蛋白の変化、および殺細胞効果を観察する。 ii) 次に、mTOR拮抗作用をもつ既知の医薬品を用いて、胆管がんの薬剤耐性への軽減効果を検討する。この実験により、エクソソーム蛋白を標的にした治療候補をいくつか挙げることができる。 iii)最終的には、上記ii)実験で見いだしたmTOR拮抗薬と、抗がん剤(ゲムシタビンetc.)の併用効果を担がんマウスで観察する予定である。この際、臨床への実用化も念頭に入れて、担癌マウスへの抗がん効果のみならず、血液・皮膚・消化管などへの副作用の有無も含めた全身観察を怠らない様に留意する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に於いては、既存の試薬・機器・解析装置を用いることで実験が可能であった。次年度以降は、初年度実験結果にに基づいて、mTOR拮抗剤を用いたエクソソーム抑制効果を観察し、さらに動物モデルを用いて、生体レベルでのエクソソーム阻害作用による胆管がんの薬剤耐性克服の可能性を探る必要がある。次年度からは、これまでの実験とおおきく内容が異なるため、新規購入する必要がある試薬・機器が大半である(約200万円相当)。従って、初年度は結果的には殆ど予算を使用しなかったが、次年度以降は、研究期間内にほぼ全予算を使う予定である。
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