2019 Fiscal Year Research-status Report
非コードRNAの発現ネットワーク解析に基づく消化器癌病態の解明と診断治療への応用
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19K08372
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
井戸川 雅史 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00404749)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非コードRNA / 癌 / non-coding RNA / ネットワーク解析 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで,蛋白質をコードする遺伝子間(intergenic)のゲノム領域は何の機能も持たないDNA配列(junk DNA)と考えられてきた.しかし近年のトランスクリプトーム解析により,そのような領域の多くが転写されmRNAのように発現していることが明らかとなった.中でもmRNAと同様にエクソンや5’キャップ,polyA構造を持つ多数の長鎖非コードRNA(long non-coding RNA, lncRNA)が,癌などの疾患病態においても重要な役割を果たしていることが明らかとなり,ヒトの生命現象の複雑性を説明する論拠となりつつある.そこで,公共データベースに登録されている消化器癌組織サンプルのRNA-seqのビッグデータを用いて,蛋白コード遺伝子およびlncRNAの発現を解析し,臨床属性との相関解析および発現ネットワーク解析により機能的に重要なハブlncRNA群を同定したい. まず,The Cancer Genome Atlas (TCGA)からRNA-seqの一次解析データを消化器癌の組織別にダウンロードし,シーケンス配列アラインメントソフトウェアであるHisat2を用いて,ヒトゲノム配列(hg38)へのアラインメントを行った.次に,転写産物構築ソフトウェアであるCufflinksを用いて,Hisat2によって得られたリード数のデータを解析することで,長鎖非コードRNA(lncRNA)を含む遺伝子転写産物の発現量を定量した.この際,転写産物のリファレンスとしてhg38に加えて,lncRNAデータベースであるLNCipediaの情報も用いた.サンプルごとのリード数のばらつきを補正するため,同付属ソフトウェアであるCuffnormを用いて組織型ごとに発現量の正規化を行った. 今後,サンプルに付随する属性情報(正常・腫瘍の別,遺伝子変異,生存率など)を発現情報と統合して属性グループ間で比較を行うと共に,ネットワーク解析によりハブlncRNA群の抽出を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究が進んでいるため.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,研究計画に従って研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
消耗品については,本年度はコンピュータ解析が主体で実験試薬の購入が少なかったため.来年度,候補のlncRNAが抽出できればその解析に用いる予定. 旅費については本年度,海外の学会に参加しなかったため.新型コロナウイルスが収束した場合,海外の学会参加を予定している. その他については,スーパーコンピュータの使用が無料の範囲内に収まったため,来年度以降の解析での使用を予定している.
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Research Products
(4 results)