2019 Fiscal Year Research-status Report
CD271陽性エリート細胞を標的とした肺高血圧症に対する新規治療開発
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19K08486
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
薄井 荘一郎 金沢大学, 附属病院, 講師 (50507043)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / 脂肪組織由来幹細胞 / 血管リモデリング / 心不全 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)を含む肺高血圧症は、極めて予後不良とされていたが、近年多くの肺血管拡張薬の登場によりその5年生存率は約60%と改善傾向にある。PAHの病態形成には低酸素や肺細動脈の血管内皮障害による慢性血管攣縮と、肺血管リモデリングが重要である。既存の肺血管拡張薬によって制御できない難治性PAHの予後は依然として不良であるため、新たな機序による治療法が求められている。そのひとつに幹細胞移植療法が期待されている。有用な細胞治療ソースとして注目される皮下脂肪組織由来再生細胞(ADRC)中のCD271陽性細胞群が優れた血管新生作用と抗炎症効果を有することが知られている。本研究ではPAHの病態形成における、CD271遺伝子の役割を示し、CD271陽性細胞投与が肺細動脈血管リモデリングに及ぼす影響を明らかにする。本年度は、低酸素誘発性モデルを作成し検討を進めた。8週齢のC57BL/6 (WT)マウスを10%低酸素下で飼育し肺高血圧症モデルを作成した。6週間後に心拍数に留意しイソフルラン吸入麻酔下に、心臓超音波検査ならびに右心カテーテル検査(右室収縮期圧を測定)後、心尖部よりヘパリン採血を施行し、flow cytometryにて血液中CD271細胞数を解析した。その後マウスを安楽死させ、臓器重量を評価測定し回収した。摘出した肺に対し組織学的評価を行った。WTマウスでは、室内気群と比較し、低酸素暴露群で右室収縮期圧の上昇を認め、組織学的評価では肺動脈の中膜肥厚および周囲の線維化を認めた。また、室内気群と比較し、低酸素暴露群で血液中のCD271細胞数は上昇していることを確認した。この結果はCD271陽性細胞が肺高血圧症の病態形成に関与する可能性を示唆するものと考えられた。今後、遺伝子改変動物での検討に加え、肺高血圧症患者末梢血での評価も行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、低酸素誘発性モデルを作成し検討を進め、flow cytometryにて室内気群と比較し、低酸素暴露群で血液中のCD271細胞数が有意に上昇していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素誘発性肺高血圧症モデルにおいて、CD271細胞数は上昇していることを確認した。現有するCD271遺伝子欠損マウスをもちいて、低酸素誘発性肺高血圧症モデルを作成し肺高血圧症の重症度をWTマウスと比較検討を行う。さらに、CD271陽性細胞の遺伝子発現解析を行い、病態形成に果たす役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた網羅的遺伝子解析が次年度に行う予定となったためその費用が次年度使用額として生じました。
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