2023 Fiscal Year Annual Research Report
CD271陽性エリート細胞を標的とした肺高血圧症に対する新規治療開発
Project/Area Number |
19K08486
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
薄井 荘一郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (50507043)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / 間葉系幹細胞 / 血管リモデリング / CD271陽性細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)を含む肺高血圧症は、極めて予後不良とされていたが、近年多くの肺血管拡張薬の登場によりその生存率は改善傾向にある。PAHの病態形成には低酸素や肺細動脈の血管内皮障害による慢性血管攣縮と、肺血管リモデリングが重要である。既存の肺血管拡張薬によって制御できない難治性PAHの予後は依然として不良であるため、新たな機序による治療法が求められている。そのひとつに幹細胞移植療法が期待されている。有用な細胞治療ソースとして注目される皮下脂肪組織由来再生細胞(ADRC)中のCD271陽性細胞群が優れた血管新生作用と抗炎症効果を有することが知られている。本研究ではPAHの病態形成における、CD271遺伝子の役割を示し、CD271陽性細胞投与が肺細動脈血管リモデリングに及ぼす影響を明らかにする。 昨年度まで、低酸素誘発性肺高血圧モデルを作成し検討を進め、WTマウスでは、室内気群と比較し、低酸素暴露群で右室収縮期圧の上昇を認め、組織学的評価では肺動脈の中膜肥厚および周囲の線維化を認めた。また、室内気群と比較し、低酸素暴露群で血液中のCD271細胞数は上昇していることを確認した。また、PAH患者を対象に初回右心カテーテル時の末梢血CD271陽性細胞数を評価し、平均肺動脈圧などの肺高血圧症の重症度、臨床指標とその経時変化との関連性を検討し、末梢血中のCD271 陽性細胞数がPAHの重症度と相関することを明らかにした。さらに、CD271遺伝子欠損が、低酸素誘発性肺高血圧病態形成を促進することを示した。今年度は、CD271陽性細胞とCD271陰性細胞において、RNA sequence解析を行った。CD271陽性細胞群で分泌タンパクproteinXが有意に増加していることが明らかとなった。proteinXの肺高血圧症に対する作用は明らかとなっていない。今後の検討課題である。
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