2020 Fiscal Year Research-status Report
Role elucidation and therapeutic application in arteriosclerosis of the lipid binding protein
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19K08500
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
高村 祥子 (赤司祥子) 愛知医科大学, 医学部, 教授 (00325599)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MD-1 / RP105 / LDL |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれはこれまで脂質会合分子MD-1 の血清濃度が感染、高脂肪食負荷、虚血再灌流障害などのストレス下で急増することを、作製したモノクローナル抗体を用いたELISAの系で示し発表してきた。このことをもとにMD-1は、『脂肪毒性』や『慢性炎症』にもかかわる分子である可能性を考えた。MD-1が会合するRP105分子の欠失マウスでは高脂肪食負荷による動脈硬化が軽減するという報告から、RP105の免疫担当細胞の表面発現にMD-1が必須であるという点も考え合わせると、われわれはMD-1がRP105の調節を介して動脈硬化発症に関与した可能性を考えている。これを明らかにするためにLDL受容体とMD-1とのダブルノックアウトマウス作製を試み、現在ほぼ完了したため、LDL受容体欠失マウスでかつMD-1欠失またはヘテロマウスの兄弟同士の高脂肪食負荷を継続して行っている。高脂肪食負荷の期間をふって調べたところ動脈硬化作製はLDL受容体欠失マウスを用いても半年以上かかることがわかった。このためまだ途中であるが、定期的な体重測定や血清採取、心臓や大血管などの組織解析は順調に進めており、ある一定の傾向は得られている。さらに今後も検体の解析を進め、脂質の蓄積がどのようにエネルギー代謝や生活習慣病に影響するのか、そこにMD-1がどう関与するのかに関する分子メカニズムを明らかにしていく。また本年度は会合分子RP105の発展的研究として、抗RP105抗体遺伝子を応用したアジュバント効果によりインフルエンザに対する抗体価上昇や感染抑制効果を見出し論文発表も行った(Yamazaki T, et al., Frontiers in Immunology, Dec.2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では、『脂質会合分子で病原体認識にも関与するMD-1がどのように動脈硬化発症に影響を及ぼすのかに関して明らかにしたい。』という目的を掲げており、以下①~④の計画をしている。①コレステロール代謝におけるMD-1の機能と炎症反応との関連を明らかにする。②LDL受容体欠失マウスを購入してMD-1欠失マウスとかけあわせ、動脈硬化への影響を調べる。③高脂肪食負荷に伴う血清MD-1濃度変遷とコレステロールエステルを含めた脂質の濃度や種類をLC/MS, Triple TOF-M/Sで解析する。④抗MD-1抗体投与で動脈硬化や高脂肪食負荷による肥満が防げるか検討する。 ①に関しては細胞レベルではまだ結果が確立していないものの、マウス個体レベルでは関連する項目にてある一定の結果が得られている。②に関して、性差の違いはあるものの体重レベルではある程度の傾向が得られている。③に関してはまだ検体採取途中で解析できていないが採取が終了次第解析を行う。④に関しては、精製抗体よりも経費が低く効果もより持続できる抗体遺伝子の高速注入投与(ハイドロダイナミクス法)を考えまずはMD-1抗体の遺伝子配列を解読して抗体遺伝子作製を完了した。プレリミナリィな結果では、我々が用いた抗体の遺伝子投与自体では予想外に血中MD-1濃度が上昇してしまった。このため本抗体遺伝子投与に関しては、MD-1上昇が動脈硬化抑制に有意であった場合に限り利用したほうがよいことが分かった。以上のように大半は解析途中であるが、検体を順調に集めておりおおむね予想通りの進捗状況であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは継続している検体採取を完了し、予定している解析項目を終わらせる。解析方法として、末梢血や腹腔から血清や細胞を回収しフローサイトメーターなどで解析を進めているが、採取の仕方により得られる結果が変わってくる場合もあり、再現性を高めるべく匹数を増やして検討する。既報の通りメスよりもオスのほうが動脈硬化になりやすい傾向が見られたため、オスの兄弟同士で比較検討をしているが、時折体重が増えないマウスもいるため摂餌量とも照らし合わせ、明らかに摂餌量に問題があるマウスは除外するなどの検討も並行して進める。また経時的に採血も行っているが、LC/MSなどの網羅的解析には量的に不十分な場合もある。その場合にはLDL欠損高脂肪食負荷マウスのみならず、通常のB6 マウスにおけるMD-1欠失あるいはヘテロでの血清脂質の違いなどの評価結果も合わせて考慮する。
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Causes of Carryover |
理由としては、製品の生産が途中でストップした会社があったことや、検体解析用の試薬や抗体の納期が輸送の問題(コロナ禍で航空輸送が減少している)のため不確実で、次年度に発注を延期せざるを得なかったことなどが挙げられる。 また解析用のサンプルの採取がまだ完了しておらず、同じ条件で一度に解析するため期限がある試薬などの発注を延ばしたことなども挙げられる。いずれも今年度に発注し使用して結果をまとめる方針である。論文発表の際には英文校正や投稿料も必要になりジャーナルによっては高額なところもあるため、今回生じた分で補填する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] A Novel Gene Delivery Vector of Agonistic Anti-Radioprotective 105 Expressed on Cell Membranes Shows Adjuvant Effect for DNA Immunization Against Influenza.2020
Author(s)
Yamazaki, T., Biswas, M., Kosugi, K., Nagashima, M., Inui, M., Tomono, S., Takagi, H., Ichimonji, I., Nagaoka, F., Ainai, A., Hasegawa, H., Chiba, J., and Akashi-Takamura, S.
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Journal Title
Front. Immunol.
Volume: 11
Pages: 606518
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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