2021 Fiscal Year Research-status Report
Role elucidation and therapeutic application in arteriosclerosis of the lipid binding protein
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19K08500
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
高村 祥子 (赤司祥子) 愛知医科大学, 医学部, 教授 (00325599)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MD-1(Ly86) / RP105(CD180) / LDL |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは独自に作製したモノクローナル抗体を用いた解析結果から、血清タンパクMD-1は、『脂肪毒性』や『慢性炎症』に関連する可能性を考えた。またMD-1が会合するRP105分子の欠失マウスでは、高脂肪食負荷および頚動脈カラー装着による早期発症動脈硬化が軽減することが報告された。以上の点やRP105の免疫担当細胞の表面発現にMD-1が必須であるという点も考え合わせると、 実際にはMD-1がRP105の発現調節を行い動脈硬化発症に関与した可能性が考えられた。これを明らかにするために、動脈硬化発症をきたしやすいLDL受容体欠失マウスをMD-1欠失マウスと掛け合わせ、長期高脂肪食負荷による自然発症の動脈硬化モデルにてMD-1の影響を解析した。まずはLDL受容体欠失マウスで血清タンパクMD-1ヘテロ及びKOマウスを作製し、半年間高脂肪食負荷を行い体重の変化や血清生化学検査、動脈硬化の傾向等を調べた。LDLrKO/MD-1KOマウスではLDLrKO/MD-1Heteroマウスに比べて体重や摂餌量の大きな差はみられなかったが、血清総蛋白、総コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセリドなどで統計的有意差が見られた。しかし今回の解析において胸部大動脈分岐部や心バルサルバ洞横断面における動脈硬化は、個体差が大きいこともあり明らかな有意差は得られなかった。免疫学的解析結果も含め現在論文にまとめつつある。 また前述のようにMD-1は、RP105の細胞表面発現に必要な分子であるが、その発現調節機構をさらに明らかにするためにそれぞれ変異体を作製して解析を行い、こちらは論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では、『MD-1が動脈硬化発症に影響を及ぼすのかについて明らかにしたい。』という目的から、以下①~④の計画をした。①コレステロール代謝におけるMD-1の機能と炎症反応との関連を明らかにする。②LDL受容体欠失マウスを購入してMD-1欠失マウスとかけあわせ、動脈硬化への影響を調べる。③高脂肪食負荷に伴う血清MD-1濃度変遷とコレステロールエステルを含めた脂質の濃度や種類をLC/MS, Triple TOF-M/Sで解析する。④抗MD-1抗体投与で動脈硬化や高脂肪食負荷による肥満が防げるか検討する。 ①に関しては細胞レベルでは再現性のあるコレステロール代謝の違いが得られなかったが、③の血清脂質解析において、脂質の構成要素である脂肪酸の血中濃度で、MD-1欠失マウスとヘテロマウスとで差がみられるものがあった。②に関して、オスマウスで統一して『研究実績の概要』に記載した解析をおこなった。動脈硬化に関しては個体差が大きく有意差が得られなかったが、血清生化学検査で前述のようにいくつか違いが得られた。④に関して は、精製抗体よりも経費が低く効果もより持続できる抗体遺伝子の高速注入投与(ハイドロダイナミクス法)を考えMD-1抗体の遺伝子配列を解読して抗体 遺伝子作製を完了していた。しかしながら抗体の遺伝子投与自体では予想外に血中MD-1濃度が上昇してしまったことや、動脈硬化発症率に有意差が得られなかったことなどからさらなる投与は行わなかった。 以上のように当初の計画に沿っておおむね遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
MD-1と動脈硬化の関連に関しては明らかな結果は得られなかった。しかしながら血清生化学検査などで一定の差を見出しており、免疫学的解析結果も含めて論文にまとめてゆく。また本来の内容とは関係ないと考えられるが、予想外の結果も得られた。このためさらなる解析等が必要であり、この点に関しては今回の内容とは別の論文へ盛り込む予定である。いっぽうでMD-1のRP105細胞表面発現制御機構や、ヒトにおけるRP105/MD-1の意義に関する研究も並行して行っており、共同研究も含めてさらに発展させてゆく。
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Causes of Carryover |
理由1)マウス解析手法の確立のところで時間を要した。:高脂肪食負荷のみでの動脈硬化発症に関しては、血管全体での動脈硬化病変面積は負荷後経時的に増加し、16週の負荷以降で20%みられるとの報告があった。これらの報告を参考に、経時的に負荷後に解剖して調べたところ、4か月以降から大動脈分岐部などで動脈硬化が生じる場合が見られたが、安定的な発症を見るには半年程度の負荷期間が必要であると思われた。この決定に至るまでに数か月の時間を有した。また生後7週令から負荷を開始し半年間たってからの解剖・解析となるため、すべての解析を終えるのに予定を超えてかなりの時間を要することになった。 理由2)プラスチック物品などの納品遅延による若干の延期の必要が生じた。:海外での配送の遅れなどからチップ、チューブなどのプラスチック製品やメディウムなどが入手しづらい時期もあり、代替品への注文変更なども行ったがやむを得ず実験遂行の延期の必要も生じた。 理由3)本来の内容とは関係ないと考えられるが、予想外の結果も得られたため、並行して更なる解析が必要となり計画続行が必要となった。 今後の使用計画:前述3)に関しては、さらなる組織解析等が必要であるものの、今回の内容とは別の論文へ盛り込む予定である。今回の研究目的に関する内容は論文作製へ向けまとめている状況であり、今後英文校正や投稿料、査読後追加実験のために使用する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Dietary Supplementation With Eicosapentaenoic Acid Inhibits Plasma Cell Differentiation and Attenuates Lupus Autoimmunity2021
Author(s)
Kobayashi, A. Ito, A. Shirakawa, I. Tamura, A. Tomono, S. Shindou, H. Hedde, P. N. Tanaka, M. Tsuboi, N. Ishimoto, T. Akashi-Takamura, S. Maruyama, S. Suganami, T.
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Journal Title
Front Immunol
Volume: 12
Pages: 650856
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Dietary supplementation with eicosapentaenoic acid inhibits plasma cell differentiation and attenuates lupus autoimmunity2021
Author(s)
Ayaka Ito, Azusa Kobayashi, Ibuki Shirakawa, Atsushi Tamura, Susumu Tomono, Hideo Shindou, Per Niklas Hedde, Miyako Tanaka, Naotake Tsuboi, Takuji Ishimoto, Sachiko Akashi-Takamura, Shoichi Maruyama, Takayoshi Suganami
Organizer
第50回日本免疫学会総会
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