2019 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化に注目した低出生体重児の成人後循環器疾患リスク上昇機序の解明
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19K08520
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
有馬 勇一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60706414)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 出生時低体重 / DNAメチル化 / ケトン体 / Hmgcs2 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常飼育マウスおよび妊娠期カロリー制限マウスから得られた生後3日目の胎仔より、細胞を単離し、FACSを用いて心筋細胞と非心筋細胞を単離した。それぞれの細胞群からDNAを抽出し、Reduced Restricted Bisulfite Sequencing法(RRBS法)にてDNAメチル化の程度を評価した。心筋特異的に発現する遺伝子群について評価した結果、心筋細胞群と非心筋細胞群との間で有意なメチル化状態の差を確認することができ、実験系が十分に成立していることが確認できた。 加えて、新生児期に心筋細胞においてケトン合成が亢進していることが確認されたため、CRISPR/Cas9法を用いてケトン体合成の律速段階酵素であるHMG-CoA Synthase2(HMGCS2)のノックアウトマウス(KO)を作成し、表現型を解析した。HMGCS2 KOは出生時点で明らかな表現型は認めなかったが、新生児期より急速な脂肪肝を呈することが確認された。組織所見・電子顕微鏡所見からミトコンドリか機能障害が示唆されたため、メタボローム解析・膜電位測定・酸素消費量測定を行うと、野生型に比べてHMGCS2 KOにおいて、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生能が低下していることが確認された。更にミトコンドリア機能低下の原因を明らかにするため、網羅的定量プロテオミクス解析、網羅的アセチル化修飾解析(アセチローム解析)を行うと、HMGCS2 KOにおいてミトコンドリアタンパク特異的にアセチル化が亢進しており、機能低下の要因となっている可能性が示唆された。 一連の結果より、新生児期に生じるケトン体合成が、エネルギー源の供給だけでなく、ミトコンドリアの保護にも機能していることが明らかとなった。今年度はDNAメチル化によるケトン体合成制御に注力した解析を進める方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RRBS解析を実施し、心筋と非心筋細胞における明らかな差を確認することができ、新生児期にケトン体合成が亢進することを確認した。加えてCRISPR/Cas9によりケトン体合成不全マウスを作成することも成功し、新生児期の脂肪肝という新たな表現型を発見することができた。一連のオミクス解析の結果より、ミトコンドリア機能不全の要因としてミトコンドリアタンパクの過剰なアセチル化が関与している可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAメチル化については、心筋・非心筋による差異が明瞭に出せることが確認できたので、それぞれについて低出生体重時での変化を検討する方針である。ケトン体代謝については、新たにHmgcs2 flox/floxマウスを作成したので、臓器特異的なケトン体合成不全モデルを作成し、表現型を検討する。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬が予定より少くなったため。次年度の実験に使用する消耗品購入のために残した。
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