2019 Fiscal Year Research-status Report
エンドセリン異常症に基づくGPCR活性化機構の解明とGqシグナルの病態への関与
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19K08534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 由紀子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (80345040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エンドセリンA受容体 / GPCR / 希少疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年ヒトにおいて、Mandibulofacial Dysostosis with alopecia (MFDA;脱毛を伴う顎顔面骨形成不全症)の一部に、class A GPCRであるエンドセリンA受容体遺伝子異常が発見され、我々はその一塩基変異モデルマウス等の作成とin vitroの実験から、機能獲得変異であることを見出しているが、昨年はその構造変化と機能の関係の解明をマウスエンドセリンA受容体(リガンドなしとNa結合状態の野生型、Y129F変異体、E303K変異体の6種類、さらにエンドセリン3結合状態の野生型とY129F変異体、合計8種類)の動力学シミュレーションを中心に行った。動力学シミュレーションのデータは、原子間距離の度数分布や水素結合の存在確率や主成分分析等を用いて解析を工夫し、Y129F変異、E303K変異それぞれに固有のヘリックスの動きを見出すことができた。さらに、その動きがエンドセリン3への親和性を上昇させることを理論的に推定することができた。この変異が100%の浸透率でヒトやマウスの形態異常を惹起することから、GPCRの動きが病態発症の直接原因であることを示すことができた。これは他のclassA GPCRにも当てはまる機序であることが予想されるので、GPCRの創薬においても注目すべき知見であると考え、現在論文にまとめているところである。 エンドセリンA受容体変異の晩発性病変発症については、同腹同ケージの飼育から、生存率と腫瘍形成に明らかな差があることをデータとして示した。また、老化マウスは順調に作成できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エンドセリンA受容体遺伝子異常の構造変化と機能の関係の解析を動力学シミュレーションを中心に行い、論文にまとめられるデータが得られている。今後追加実験の可能性もあるが、ひとまずは順調に進展していると考える。 エンドセリンA受容体変異の晩発性病変発症については、基本データを取得できた。本格的な機序の解明はこれからであるが、おおむね当初の予定通りともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
エンドセリンA受容体変異の晩発性病変については生存率と腫瘍形成に明らかな差があることをデータとして示したので、病理組織学的所見からエンドセリンA受容体活性化特有の癌化であるのか、老化マウスに起こりやすい癌化を促進しているのかを考察するとともに、どちらにせよその分子生物学的機序を解明する。また、肺高血圧症モデル作成によるエンドセリン受容体拮抗薬の効果的治療戦略も予定している。更に褐色/ベージュ脂肪細胞や白色脂肪細胞の発生、増殖に変化があるか評価する。
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Causes of Carryover |
本年度は動力学シミュレーションを中心に行っていたため、マウスの大規模な繁殖を差し控えた。そのためマウス維持管理費が予算ほど必要でなかったことから差額が生じたが、次年度はマウスの実験が増えるためマウス維持管理費は更に必要となる。
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Research Products
(2 results)