2021 Fiscal Year Annual Research Report
エンドセリン異常症に基づくGPCR活性化機構の解明とGqシグナルの病態への関与
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19K08534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 由紀子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (80345040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エンドセリンA受容体 / GPCR / 希少疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年ヒトにおいて、脱毛を伴う顎顔面骨形成不全症の一部に、class A GPCRであるエンドセリンA受容体 遺伝子異常が発見され、我々はその一塩基変異モデルマウス等の作成と薬理学的実験を施行し、既に機能獲得変異であることを見出している。その1アミノ酸変異によってどのようにして機能獲得するかを動力学シミュレーション(MD)を用いてその構造変化から明らかにした。今年度はさらにET1とET3リガンドの結合性に違いについてさらに踏み込んだ解析を行った。以前より、エンドセリン(ET)B受容体はET1、ET3に対し同程度の高い親和性を有しているが、ETA受容体はET3に対する親和性が低いことは周知の事実であったが、その理由は不明であった。今回我々は、ETリガンドとETA受容体の結合時のモデリングと MDを行い、結合状態での両者の水素結合に着目した。ET3に親和性のないETA受容体正常型では、受容体の326番目のアルギニン(R)がET3と水素結合を形成できないが、ET3に親和性のあるY129F変異型では形成できることが重要ではないかと推測した。そこでR326をグルタミン酸(Q)に変異させてその水素結合を形成しない受容体を細胞に強制発現させ、GPCR/Gqシグナル特異的な細胞内カルシウム濃度を測定した。R326QはET1ともET3とも水素結合を形成しないのに、Y129F変異+R326Q変異はET1に対する反応性は変わらずET3に対する反応性のみ低下した。このことは、ET1とET3は相同性が高いが結合の仕方が違うことと、Y129 変異ではR326が重要であることを示している。ET3とR326の水素結合の有無はET3とR326が属するヘリックス6の距離の問題であり、これを変化させたのはY129F変異である。すなわちアロステリック様変位によって親和性を変化させることを示すことに成功した。
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