2019 Fiscal Year Research-status Report
CCN2機能制御による慢性・急性腎障害の新規治療薬の開発
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19K08731
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
井上 勉 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30406475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 浩一 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60233342)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CCN2 / 腎線維化 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は慢性腎臓病の新規治療薬開発を最終目的とした基礎研究である。 本計画の目標:腎線維化は腎機能低下に関わる主要病変である。我々の研究成果から、尿細管上皮細胞由来のCCN2が重要な因子であることが判明した。我々はこれまでに、CCN2の第4モジュールが、FAK(focal adhesion kinase)のリン酸化を介して、尿細管上皮細胞の形質変化を生じる、という一連の現象を確認した。そこで①FAKリン酸化部位の同定と既存のFAK阻害薬の有効性の検討、②CCN2がFAKのリン酸化を介して如何に腎線維化を生じるか、その機序を明らかにすることが本研究計画の目標である。 本年度の成果:本研究では当研究室で独自に開発したCCN2Ex5koマウスを用いている。同マウスでは第4モジュール欠損CCN2が正常のCCN2プロモータ制御下に発現する。本研究期間より以前に、同マウスでは複数の慢性・急性腎疾患モデルにおいて、正常CCN2発現マウスと比較して、腎線維化の進行が顕著に遅延することが確認されている。本年度は当初の計画通り、同マウスに片側尿管結紮モデル作成後、正常CCN2発現ベクターを大量に筋肉内投与し、抑制されていた腎線維化病変が正常マウスと同程度まで進行することを明らかにした。更に、同マウスから初代皮膚線維芽細胞を取得し、正常CCN2発現ベクターを遺伝子導入したところ、FAKのリン酸化程度も正常と同等まで回復することが確認された。 意義・重要性:上記の成果から、CCN2 以下の受容体(あるいはそれ以外の何らかの作用機序で)腎線維化/FAKのリン酸化を促進する経路については(CCN2Ex5koモデルでも)正常と同様に機能していることが確認された。CCN2第4モジュールの作用機序の詳細を検討するための有用な評価系であるという結論に至り、以降も予定通り研究計画をすすめることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で使用する(当研究室で作成した)CCN2Ex5koマウスの形質の確認が初年度の主たる検討内容となったため、同年度に計画していたFAKリン酸化部位の同定が進んでいない。しかし、研究成果としては触れなかったが、治療にも関わるデコイペプチドを用いた検討については、in vivoでの効果をex vivoでも確認し、容量依存性や作用部位の特異性の検証を開始している。初年度の結果の限りでは、当初想定されたインテングリンが、CCN2とFAKを連携する受容体として極めて有力であるという印象を得ている。CCN2Ex5koマウスの形質の検証に加えて、培養細胞を利用したex vivoな評価系を確立したことは、今後、本研究を遂行するあたって重要な成果となった。2年目以降の計画に掲げているインテグリンサブユニットの発現プロファイリングや、FAK阻害薬のスクリーニングにも、in vivoの評価系と平行して(あるいは先行して)ex vivoの評価系を利用する計画としている。以上の様な進捗状況であるため、総合的には「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も当初の計画書通りの研究を予定している。 ・慢性腎臓病モデルをWild(CCN2Ex5+/+)マウスおよびCCN2Ex5ko(=-/-)マウスで作成、更に培養細胞系も用いてFAKのリン酸化部位、腎組織内での分布を検討し、CCN2の作用部位を具体的にする。これまでの我々の検討結果からは尿細管上皮細胞が有力な作用ターゲットである。 ・既存のFAK阻害薬の効果を検証する。計画書通り、候補としてはDefactinib、PND-1186、TEA226が挙げられるが、いずれもTyr397リン酸化阻害薬であり特異性、投与経路、および既報の内容から優先順位を決定する。FAKの他のリン酸化部位(Tyr576/577、Tyr925)についても阻害薬が知られており検討を進める。 ・CCN2Ex5koマウスをCCN2第4モジュールの機能評価に用いることの妥当性(変異型CCN2の発現状況や、プロモータ活性は過去に確認済み。FAK以下の経路が機能していることは本研究初年度に確認完了)は予定通り検証が終了し目標は達成された。今後、CCN2/FAKから下流のシグナル伝達系の詳細を明らかとする。In vivoの系としては上記の遺伝子改変マウスを用いるが、ex vivoの系として同マウスから取得する(初代)皮膚線維芽培養細胞の他、今後の臨床応用を視野にヒト細胞での検討を平行して予定する。我々の検討結果では既存のHK-2にCCN2発現が確認されており、同細胞はインテグリン/FAKが機能することも既報にある。CCN2作用の全容が明らかとなる2年目以降には、FAKより更に下流の関連分子を治療対象として選定することも考慮していく。同経路は抗がん剤として多くの分子標的薬が開発途上にあり、各薬剤の開発状況も考慮する。
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Causes of Carryover |
進捗状況に記した様に、今後の研究計画の正確性を担保する目的で、使用している遺伝子改変マウスの形質の確認を優先して進めたことにより、計画していたウエスタンブロットの一部が保留になった為、消耗品費が予定よりも少額になった。
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