2020 Fiscal Year Research-status Report
アリル炭化水素受容体リガンドによる糖尿病性潰瘍の治療効果
Project/Area Number |
19K08795
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Cancer Center |
Principal Investigator |
内 博史 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 皮膚科医長 (50437787)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性創傷 / アリル炭化水素受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では慢性創傷の治癒を促進する化合物の発見を目的とする。これまでの検討でIncuCyteを用いたin vitroでの創傷治癒モデルを作成し、表皮ケラチノサイトを遊走あるいは増殖させる化合物のスクリーニングシステムを既に確立している。2019年度までにアリル炭化水素受容体(AHR)に対するリガンドとして作用する化合物およびその誘導体の中で、本研究において有望と考えたトリプトファン誘導体、Malassezia産生化合物についてスクリーニングを実施したところ、indirubinに濃度依存的な創傷治癒促進効果を認めた。indirubinはMTTアッセイおよびBrdU取り込みアッセイにおいて、表皮ケラチノサイトの細胞増殖に有意な影響を与えなかった。またindirubinのIncuCyteにおける創傷治癒促進作用はマイトマイシンCによる処理では阻害できなかったが、アクチン重合阻害剤であるサイトカラシン処理では完全に阻害されたことから、indirubinはケラチノサイトの細胞遊走作用を増強することで、創傷治癒を促進していると考えられた。2020年度は、ケラチノサイトの細胞遊走に関わるシグナル経路に及ぼすindirubinの作用について検討を行ったところ、indirubinはケラチノサイトのJNK/c-jun経路を有意に活性化し、JNKの特異的阻害薬であるSP600125によりindirubin誘導性のJNK, c-junのリン酸化が抑制された。さらにIncuCyteによるin vitroの創傷治癒モデルにおいて、indirubinによる創傷治癒促進効果がSP600125により阻害されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は本研究においてindirubinが有望な化合物であることを示し作用機序の一部を解明した。2020年度はさらにindirubinの作用機序に関わるシグナル伝達経路を特定したことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はシグナル伝達経路における、1. indirubinの作用点の特定、2. in vivoでの創傷治癒モデルにおけるindirubinの効果を検討する。1では、ケラチノサイトの細胞遊走に関わるシグナル経路としてPI3K/Akt経路、RAS/RAF/MEK/Erk経路、ROCK/MEKK1/JNK経路の関与が知られていることから、これらの分子の活性化に及ぼすindirubinの作用をwestern blotting法などで検討する。2では、マウスによる創傷治癒モデルを作成し、indirubinの局所投与による創閉鎖への影響を検討する。以上により、indirubinの臨床応用への展開を視野に入れた研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
同一の試薬を複数同時に買った際の割引により、当初の見込み額と執行額にわずかに差を生じたが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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