2020 Fiscal Year Research-status Report
赤血球最終分化段階のミトコンドリア除去機構の解明と血球貪食症候群への応用
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19K08859
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
本田 真也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, プロジェクト講師 (90532672)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / 赤血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤血球は最終分化段階において、ミトコンドリアをはじめとするオルガネラを分解する。申請者らは、胎仔赤血球成熟段階のミトコンドリア除去に、Atg5やAtg7に依存しない、Ulk1依存的な新規オートファジーが関わっていることを報告した。しかしながら、その詳細なメカニズムは未だ明らかになっておらず、どのようにしてミトコンドリアを認識しているのかも不明なままである。本研究では、網羅的な解析を行い、新規オートファジー関連分子を同定し、新規オートファジーによる赤血球分化時のミトコンドリア除去機構の解明を行う。 今年度は、昨年度の解析より明らかにした候補分子のノックアウトマウスを作製し、解析を行った。この分子は野生型とUlk1欠損細胞間での変動が最も大きかった分子で、通常核内に存在するが、網状赤血球ではミトコンドリアに局在が変化していた分子である。 また、これまでの解析からミトコンドリア除去との関連が高いと考えているユビキチンリガーゼに関して、昨年度欠損マウスを作製し解析を行ったが、ミトコンドリア除去への影響は見られなかった。その理由としてこの遺伝子のパラログの関与が考えられたため、ユビキチンリガーゼとそのパラログの両欠損マウスを作製し解析を行った。 さらに線維芽細胞を用いた網羅的な解析から、新たに新規オートファジーのマーカーになりえる候補分子の同定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らはこれまでに、胎仔赤血球成熟段階のミトコンドリア除去には、Ulk1依存的な新規オートファジーが関わっていることを明らかにしている。そのメカニズム解明のため、野生型とUlk1欠損マウス胎仔から網状赤血球、循環血を単離し、マス解析により網羅的に発現タンパク質の解析を行った。その結果、昨年度候補分子として核内タンパク質の一つを同定した。そこで、この欠損マウスを作製し、ミトコンドリア除去への影響を解析した。しかしながらこのマウスにおいて赤血球分化時のミトコンドリア除去への影響は認められなかった。 また、これまでの解析から可能性の高い候補分子として同定しているユビキチンリガーゼに関して、昨年度欠損マウスを作製し解析を行ったが、ミトコンドリアの除去に影響は見られなかった。その理由として、この遺伝子のパラログの関与が考えられたため、このユビキチンリガーゼとそのパラログの両欠損マウスを作製し、解析を行った。両欠損マウスでは、ユビキチンリガーゼ単独欠損同様、赤血球分化マーカーの発現に若干の遅延が確認されたものの、ミトコンドリア除去に対する影響は見られなかった。 新規オートファジー関連分子の更なる探索のため、MEF細胞を用い新規オートファジー誘導による網羅的なMS解析を行った結果、新たな候補分子として膜タンパク質AAG14 (Alternative AutophaGy 14) を同定した。このタンパク質の局在を解析したところ、通常時はゴルジ体に局在するものの、新規オートファジーの刺激によりリソソームにその局在を変化させることが明らかになった。このような特徴から、AAG14は新規オートファジーのマーカーになりうることが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、昨年度同定した核内タンパク質の欠損は、ミトコンドリアの除去に影響しないことが明らかになった。このタンパク質のミトコンドリアへの局在変化が、ミトコンドリアの分解のために重要であると考え解析を行ったが、ミトコンドリアの分解を抑制している可能性も考えられる。そこで今後は、この欠損マウスとUlk1欠損マウスと交配することで、Ulk1欠損で見られるミトコンドリアの分解異常に影響を与えるかについて解析を行う。 また、これまでの解析から候補分子として同定していたユビキチンリガーゼに関しては、単独欠損及びそのパラログを同時に欠損したマウスにおいてもミトコンドリアの除去には影響がなかったことから、ミトコンドリア除去には関与していない可能性が高いことが考えられた。しかしながらMEF細胞においてこの分子のノックダウンがゴルジ体の形態異常を引き起こすこと、マウス赤血球において野生型と比較して赤血球分化マーカーの発現に若干の遅延が確認されることから、ゴルジ体の形態維持に重要な役割を果たしていることが考えられた。今後はこの分子の結合タンパクの解析などを行い、どのようなメカニズムでゴルジ体の形態維持に関与しているのかを解明していく予定である。 さらに今年度新たに同定したAAG14に関して、ノックダウンや過剰発現による新規オートファジーへの影響などの解析や、赤血球分化時の局在などの解析を行っていく予定である。また、様々な新規オートファジー誘導時における局在の解析などから、この分子が新規オートファジーのマーカーになりえるかについて検証する予定である。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言中の約2か月間、大学から90%の研究削減の指示が出ており、細胞株やマウスの系統維持のみしか行えなかった。 研究自体はおおむね順調に進んでいるが、研究削減時期に行う予定であった検体数の追加(細胞、マウス実験共にサンプル数の追加)は、次年度行うことにより、最終目標を達成する。
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Research Products
(2 results)