2019 Fiscal Year Research-status Report
局所性アレルギー性鼻炎に関わるIgEクラススイッチ機序の解明と治療への展開
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19K08879
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
板澤 寿子 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (70361970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 雄一 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (80184191)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 局所性アレルギー性鼻炎 / IgE / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー性鼻炎(AR)の有病率は増加し、近年、発症の低年齢化も問題となっている。ARの新しい概念として、抗原特異的IgEが血清中には検出されず、鼻粘膜局所でのみ確認され、鼻誘発テストが陽性である局所性アレルギー性鼻炎(Local allergic rhinitis; LAR)が提唱され、LARの患者は将来的にアトピー型ARや気管支喘息(BA)を合併することが報告されているが、その病態については不明な点が多い。本研究では、ヒトの鼻粘膜でのみIgEへのクラススイッチ組換え(class switch recombination: CSR)が起こる機序を解明することで、LARのみならず、アトピー型ARやBAの発症予防や治療に貢献することが目的である。 まず、2019年度は、ヒト臍帯血から分離したナイーブB細胞をIL-4、BAFF(B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)、CD40リガンド、LPSなどの存在下で培養し、ARの主要抗原であるネコ皮屑、ブタクサ花粉などの抗原による共培養を行った。培養上清中の免疫グロブリンはELISA法を用いて測定し、B細胞の特性はフローサイトメトリー法にて解析した。さまざまな培養条件を検討し、ヒト臍帯血ナイーブB細胞をBAFFとIL-4で培養することによりIgE産生を誘導する培養系を確立した。また、この培養系では、IL-4とBAFFの存在下において、ネコ皮屑抗原、ブタクサ花粉の刺激によってIgE産生が増加した。この結果から、抗原がB細胞を直接刺激することによりIgE産生が誘導される可能性が考えられる。今後、IgE産生を制御する因子の探索も含めて、IgEへのCSRの機序の解明を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、初年度に成人や小児の健常者のナイーブB細胞におけるIgE産生についても検討する予定であったが、臍帯血のナイーブB細胞を用いた培養条件の検討に時間を要したため、成人や小児については実施できなかった。また、今回の培養条件では必要な血液量が多くなるため、研究参加者、とくに小児においては負担が大きいことが問題となった。そのため、実施可能な小児での検討項目について見直しを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、IgE産生を制御する因子の探索、健常者とAR(LARおよびアトピー型AR)の患者におけるB細胞のIgE産生能や抗原によるIgE産生能の差異、培養細胞におけるIgEへのCSRに関連するAicda、PSTε、GLεなどの遺伝子発現の評価を行う予定である。さらに、健常者およびAR(LARおよびアトピー型AR)の患者の血清中および鼻腔中のBAFF濃度測定、鼻粘膜組織におけるBAFFの遺伝子発現の評価についても準備を進めている。
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Causes of Carryover |
当初は、初年度に成人や小児の健常者のナイーブB細胞においてもIgE産生について検討する予定であったが、臍帯血のナイーブB細胞を用いた培養条件の検討に時間を要したため、成人や小児についての検討が実施できず、予定していたよりも試薬や物品を購入しなかった。また、研究途中で所属先が変更になったため、富山大学での研究をさらに進めることが難しくなり、また、新しい所属先の埼玉医科大学では、本研究に関する物品や試薬を揃えることになるため、初年度の資金を次年度に繰り越すことで、本研究を再開、継続していく予定である。
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