2020 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1のシェーグレン症候群病態形成への直接的関与
Project/Area Number |
19K08884
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 英樹 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (10437832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 俊匡 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40770467)
川上 純 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90325639)
高谷 亜由子 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (90821380)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シェーグレン症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗HTLV-1抗体陽性シェーグレン症候群(SS)患者の口唇唾液腺では異所性胚中心形成が低頻度であることから濾胞性樹状細胞(FDC)に対するHTLV-1の影響が示唆される。FDC様細胞のBAFFとCXCL13発現に対するHTLV-1の影響を検討した。ヒト扁桃組織から分離し培養したFDC様細胞の表面マーカーを免疫蛍光染色(IF)とflow cytometry(FCM)で確認した。HTLV-1関連脊髄症患者由来細胞株HCT-5とFDC様細胞を直接/間接共培養し、BAFFとCXCL13の発現をIFとELISAで検討した。抗HTLV-1抗体陽性SS患者と抗HTLV-1抗体陰性SS患者の血清BAFF、CXCL13をELISAで測定した。扁桃組織33検体のうち22検体でFDCの形態を示す細胞が増殖した。培養2日目の細胞はIFでCD14、CD23、CD40、ICAM-1陽性、培養2週目にはFCMでICAM-1、FDC(CNA.42)、fibroblast表面蛋白が陽性であった。IFではFDC様細胞は無刺激でもBAFF、CXCL13を発現していたが、HCT-5との直接共培養ではHCT-5細胞数に応じて細胞質は狭細化し、BAFFとCXCL13発現は低下した。間接共培養ではそれらの所見は観察されなかった。ELISAではIFN-γおよびIFN-α+IFN-γ刺激により上清BAFFが増加し、同条件下にHCT-5を添加するとBAFFは減少した。抗HTLV-1抗体陽性SS(n=9)と抗HTLV-1抗体陰性SS(n=30)の血清BAFFは各々882±172、1393±1442、CXCL13は92±64、150±109 pg/ml (mean±SD)であった(いずれもp=0.07)。HTLV-1感染細胞の直接接触がFDCのBAFFとCXCL13発現を抑制している可能性がある。今後、HTLV-1感染が、抗原提示細胞/T細胞/B細胞による抗Ro/SS-A抗体産生にどのような直接的な影響を及ぼすかを検討予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自己抗体産生系の調節を司る濾胞性樹状細胞に対するHTLV-1の効果はこれまで全く不明であった。しかし、今回ヒト扁桃から樹立したFDC様細胞株を用いて、HTLV-1感染細胞株の直接的効果を確認することができた。FDC様細胞株の細胞質内BAFFとCXCL13と分泌されるBAFFがHTLV-1感染細胞株との共培養で発現低下することが確認できたことは、大きな進展であった。一方で、自己抗体産生系へのHTLV-1の直接的な影響やHTLV-1感染唾液腺組織を用いたT細胞サブセット解析は未施行であり、全体としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
血清IgG産生へのHTLV-1影響も確認予定であるが、自己抗体産生能への直接的な影響をみるため、抗Ro/SS-A抗体産生へのHTLV-1の影響も確認したい。このため、関節リウマチ(RA)・健常人末梢血由来B細胞をCD40L発現フィーダー細胞(あるいは代替としてリコンビナント可溶性CD40リガンド)・PMA・PHA/PMA刺激したT細胞培養上清で刺激し、抗CCP抗体産生をみる手法を用いて、SS・健常人末梢血B細胞からの抗Ro/SS-A抗体産生を確認したのち、HCT-5/MT-2/MOLT-4との共培養によって、抗Ro/SS-A抗体産生変化が起こるのかをを検討する。また、HAM 合併SS、抗HTLV-I抗体陽性無症候性キャリアSS、抗HTLV-I抗体陰性SS、コントロール群小唾液腺におけるCD4+T細胞サブセット(Th1、Th2、Tfh、Th17)の免疫組織学的な比較も行いたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては二つ挙げられる。一つは、シェーグレン症候群(SS)患者血清と濾胞性樹状細胞上清におけるBAFFとCXCL13のELISA測定に時間を要した点と、この間同一のELISAキットを用いる研究を行ったため、余剰な試薬購入が不要な期間があったためである。もう一点は、これらの測定後、次の実験に進む前に論文投稿およびリバイス期間に入ったためである。 SS唾液腺における自然免疫受容体、TLR7-9発現と、TLR7の形質細胞様樹状細胞(pDCs)と唾液腺上皮細胞、特に唾液腺細胞での発現と機能を検討中である。他施設での検討でもHTLV-1とSSの関与についてこれら自然免疫受容体とHTLV-1感染の分子機序関連を明確にした報告は無く、科研費研究として行う価値は高い。in vitro研究において、HTLV-1感染細胞株と唾液腺上皮細胞の共培養後にHTLV-1Gag蛋白がTLR7-9のいずれかと共発現するかを検討する必要がある。また、共培養初期においてHTLV-1 Gag蛋白がどのオルガネラに局在するのかを解明したい。この結果、HTLV-1初期感染から自然免疫のどの経路を使用してintegrationに至るかが明らかとなる。このためには、次年度使用額も加味した予算が必要と考えられる。
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[Journal Article] Inhibitory effect of HTLV-1 infection on the production of B-cell activating factors in established follicular dendritic cell-like cells2021
Author(s)
Takatani A, Nakamura H, Furukawa K, Endo Y, Umeda M, Shimizu T, Nishihata S, Kitaoka K, Nakamura T, Kawakami A
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Journal Title
Immunity, Inflammation and Disease
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access