2020 Fiscal Year Research-status Report
エクソソーム産生調節を介するアディポネクチン作用の基盤と応用展開
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19K08978
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
喜多 俊文 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (10746572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 法一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30506308)
西澤 均 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20379259)
藤島 裕也 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10779789)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アディポネクチン / エクソソーム / 幹細胞 / セラミド / カドヘリン |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(MSCs)はT-カドヘリン(T-cad)を発現し、アディポネクチン(APN)添加に応じてエクソソーム(Exo)産生が亢進することを見出した。圧負荷心不全(TAC)モデルにおけるMSCs投与による心機能改善作用は、MSCsのExo分泌に依存し、血中のAPNレベル、MSCsのT-cad発現に依存することを報告した(Nakamura et al., Mol Therapy 2020)。PioglitazoneとMSCsの併用に関して「幹細胞治療増強方法」として特許を申請した(特願2019-234288)。 このような間葉系幹細胞は全身のあらゆる組織に体性幹細胞として存在する。腎はT-cadの発現が特に低い臓器であるが、詳細に検討すると尿細管周囲の毛細血管の周囲細胞に発現を認め、APNの集積も認めた。さらに、腎虚血再灌流障害によって、T-cadあるいはAPN欠損マウスでは野生型よりも尿細管壊死が重度となることを明らかにした(Tsugawa-Shimizu et al., AJP Endocrinol Metab 2021)。 T-cadは血中にExoの構成成分としてのみならず、大部分は遊離タンパクとして存在すること、新規に開発したELISA系によって定量可能であり、また糖尿病患者群の中でHBA1cなどのパラメータと有意な相関を示すことを明らかにした(Fukuda et al., JCEM2021)。 また、生理的APNの主要な受容体はT-cadであること(Kita et al., Elife 2019)、APNによるExo産生調節機構(Obata et al., JCI insight 2018, Kita et al., JCI 2019)が果たす筋再生促進(Tanaka et al., SciRep 2019)や腎虚血再灌流障害の低減作用(Tsugawa-Shimizu et al., AJP Endocrinol Metab 2021)、間葉系幹細胞治療への応用(Nakamura et al., Mol Therapy 2020)を元に、Exoの内分泌機構としての新しい位置づけを提唱した(Kita et al., JB review 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「エクソソーム産生調節を介するアディポネクチン作用の基盤と応用展開」では下記の3点を主要目的とした。①APNのExo産生促進を介する臓器保護機序を解明し、②膜近傍切断制御を中心としたT-cadの制御機構、及び血中遊離T-cadの病態生理学的意義を解明する。また、③APN/T-cadシステムの間葉系幹細胞機能における役割を明らかにする。 ①に関し、腎虚血再灌流障害の保護作用に尿細管周囲の毛細血管周囲細胞のT-cadを介するExo産生が関与すること(Tsugawa-Shimizu et al., AJP Endocrinol Metab 2021)を報告した。②に関しては、T-cad膜近傍切断あるいは分泌産物としての遊離T-cadを定量するELISAを産学連携して開発し、糖尿病患者臨床パラメータとも相関する新たな指標として報告した(Fukuda et al., JCEM 2021)。③では、間葉系幹細胞(MSCs)はT-cadを発現し、APN添加に応じてExo産生が亢進することを見出した。圧負荷心不全(TAC)モデルにおけるMSCs投与による心機能改善作用は、MSCsのExo分泌に依存し、血中のAPNレベル、MSCsのT-cad発現に依存することを報告した(Nakamura Y et al., Mol Therapy 2020)。 さらに、ExoをAPNによって調節を受ける新たな内分泌機構として位置付ける総説を執筆した(Kita et al., JB review 2021)。 以上から、当初の計画以上に進展していると考えるが、引き続き「遊離T-cadの産生メカニズムとその作用」や「様々な臓器に常在するMSCsを介するAPNの全身的作用」を解明するとともに、「APNによって作用増強されるMSCsの臨床応用」を模索する。
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Strategy for Future Research Activity |
「エクソソーム産生調節を介するアディポネクチン作用の基盤と応用展開」では①APNのExo産生促進を介する臓器保護機序を解明し、②膜近傍切断制御を中心としたT-cadの制御機構、及び血中遊離T-cadの病態生理学的意義を解明する。また、③APN/T-cadシステムの間葉系幹細胞機能における役割を明らかにすることを目的とした。 この中で②では「血中遊離T-cadの病態生理学的意義」や「遊離T-cadの産生メカニズム」が依然として不明である。この点を解明するために、㈱免疫生物研究所と共同研究を行い、ELISA系を開発した(Fukuda et al., JCEM2021)。今後、様々な臨床検体、動物モデルの血中遊離T-cad濃度を測定し、血中遊離T-cadの病態生理学的意義を明らかにする。また、骨格筋・心筋・血管内皮・組織MSCs特異的T-cad欠損マウスの作出を行っており、遊離T-cadの主要な産生組織・細胞を決定する。 さらに、先端モデル動物作成支援プラットフォームの支援を受けて、臓器・細胞特異的産生Exo可視化マウスを作製した。本マウスを用いて、血中Exoの主要な産生組織・細胞を明らかにするとともに、組織MSCsが産生するExoの生理的役割とそのAPNによる制御、及びこれらの経路を促進する創薬ターゲットの創出を目指す。
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Causes of Carryover |
研究費に端数が生じたので次年度に繰り越して使用する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Increased vascular permeability and severe renal tubular damage after ischemia-reperfusion injury in mice lacking adiponectin or T-cadherin.2021
Author(s)
Tsugawa-Shimizu Y, Fujishima Y, Kita S, Minami S, Sakaue TA, Nakamura Y, Okita T, Kawachi Y, Fukuda S, Namba-Hamano T, Takabatake Y, Isaka Y, Nishizawa H, Ranscht B, Maeda N, Shimomura I.
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Journal Title
Am J Physiol Endocrinol Metab.
Volume: 320
Pages: E179-E190
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Identification and clinical associations of three forms of circulating T-cadherin in human serum.2021
Author(s)
Fukuda S, Kita S, Miyashita K, Iioka M, Murai J, Nakamura T, Nishizawa H, Fujishima Y, Morinaga J, Oike Y, Maeda N, Shimomura I.
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Journal Title
J Clin Endocrinol Metab.
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Adiponectin Stimulates Exosome Release to Enhance Mesenchymal Stem-Cell-Driven Therapy of Heart Failure in Mice.2020
Author(s)
Nakamura Y, Kita S, Tanaka Y, Fukuda S, Obata Y, Okita T, Nishida H, Takahashi Y, Kawachi Y, Tsugawa-Shimizu Y, Fujishima Y, Nishizawa H, Takakura Y, Miyagawa S, Sawa Y, Maeda N, Shimomura I.
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Journal Title
Mol Ther.
Volume: 28
Pages: 2203-2219
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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