2020 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の転移臓器指向性に着目した臓器特異的転移形成促進性微小環境の解明
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19K09175
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮坂 義浩 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寅田 信博 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (00398075)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵癌 / desmoplasia / drug delivery system / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は組織学的にdesmoplasiaと呼ばれる過剰な間質増生を特徴としている。膵癌間質は組織圧が高く乏血性でかつ細胞外基質が豊富であることから、薬剤送達効率が低く、治療抵抗性の一因となっている。このことから、新たなdrug delivery system(DDS)を開発することで、薬剤送達効率を向上させ、安全かつ効率的な膵癌の治療効果を開発することを目的とする。 今年度、膵癌間質組織に特異的に送達することができるナノ粒子によるDDSを開発し、膵癌移植マウスでその薬物動態を調べた。その結果、ナノ粒子は膵癌組織および転移巣に特異的に送達され、正常組織には集積しないことを明らかにした。血中滞留性も高く、ナノ粒子を用いない薬剤と比較して、より長期にわたる薬剤の腫瘍集積性の向上を認めた。このことから、本DDSを用いることで、より低用量の薬剤投与が可能になると考えた。投与薬剤として、まずchloroquineについて検討を行った。当研究室ではこれまで、chloroquineが膵癌間質における主たる構成細胞である膵星細胞のautophagyを抑制することで、その活性化を抑制することを報告してきた。しかしながらその効果を得るためには、実臨床での許容用量以上の高用量の投与が必要で、副作用も懸念されていた。このため、本DDSを用いてchloroquineを投与することでそれらの問題を改善し得ると考え、実験を行った。その結果、通常の5分の1という低用量で、確実に膵癌の間質増生抑制ができることを明らかにし、本研究結果を国際学会および国内主要学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌間質組織に特異的に送達することができるナノ粒子によるDDSを開発し、その機能評価を行うことができた。さらにそこに封入する薬剤についても検討を進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本DDSを用いてchloroquineを投与することで腫瘍間質増生の抑制が可能となった。これにより、抗癌剤や免疫チェックポイント阻害剤の薬剤送達効率の改善が期待でき、実際に治療効果が得られる可能性がある。今後はこれらの薬剤との併用療法について検討を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は研究用試薬、器材などに使用する予定である。
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