2021 Fiscal Year Research-status Report
μ波を用いたno-touch techniqueによるCABGグラフト採取
Project/Area Number |
19K09236
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤原 英記 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20747117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋木 佳克 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50372298)
安達 理 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30375092)
吉岡 一朗 東北大学, 大学病院, 助教 (90770272)
鈴木 智之 東北大学, 大学病院, 助教 (10837157)
鈴木 佑輔 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70791698)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冠動脈バイパス手術 / エネルギーデバイス / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
狭心症や心筋梗塞の治療法として冠動脈バイパス術は一般的な治療法である。近年静脈グラフトの採取法を工夫することで動脈グラフトに匹敵する成績が報告されるようになった。静脈グラフトを採取する際に直接血管壁に触れずに周囲脂肪と一塊 にして摘出し、従来法のように採取時の血管攣縮解除のための血管拡張手技を行わない、この一連の操作がno touch techniqueと呼ばれるものである。しかし手技の問題点として血管の枝やリンパ管の処理が煩雑となる部分があり、術後のグラフトからの出血や採取部のリンパ瘻の発生、さらには組織欠損に由来する創傷治癒遅延による創部感染症につながることもあり手技自体の効率化が望まれる。そこで我々は新規のエネルギーデバイスを使用しno touch techniqueで血管の採取を行うことを考案した。使用する機器はμ波を用いたエネルギーデバイスであり、本邦で開発されたものである。2017年4月に発売されておりすでに消化器外科や呼吸器外科の鏡視下手術、甲状腺、乳腺の手術で用いられている。血管を挟んで止血と切開が同時にでき、組織を挟んだ部分にのみ作用するので周囲組織への損傷が最小限となることが期待されている。μ波を用いたエネルギーデバイスを用いて血管採取を行い、手技の質の改善が得られるかどうかを検討している。家畜ブタ、ミニブタを用いた実験を検討しており血管採取直後に摘出標本の一部用いて開存性に関して極め て重要とされる組織の構 造が保ているか、血管機能が保たれているかを病理学的、生理学的に評価する。さらにブタを使用して冠動脈バイパス術を行い慢性期 モデルを作成し、開存度、病理変化、血管造影による血管全体の内腔評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
家畜ブタ、ミニブタを用いてno touch techniqueで採取した静脈グラフトで冠動脈バイパス術を行い慢性期にグラフト評価の実験を行う予定であった。しかし伏在静脈は非常に細く、また伏在動脈とも伴走しており、脂肪組織もほとんどなくno touch techniqueでの採取は困難であった。 ヒトの大伏在静脈のように静脈単独で走行しているものは乳腺静脈であった。しかし病理組織の検討や血管径などの肉眼的な評価からヒトの大伏在静脈と異なり、ブタの乳腺静脈は外膜が発達しており血管の拡張手技を加えても変化が乏しかった。また25-30kgの家畜ブタを用いて実際に乳静脈を用いて冠動脈(左前下行枝)に人工心肺を用いない冠動脈バイパスを行った。全身麻酔下に人工呼吸器管理として右内頸静脈に薬剤投与、術後の輸液投与及び中心静脈圧測定用に中心静脈カテーテルを留置。また右下肢の伏在動脈に観血的動脈圧測定を行いながら手技を行った。両側乳静脈を一方は脂肪組織をつけない従来法で採取。もう一方は脂肪組織と一塊にして血管壁に直接触れないno touch techniqueで採取した。その後胸骨正中切開を行い、左内胸動脈を採取。採取した乳静脈と端々吻合を行いコンポジットグラフトを作成し心拍動下に冠動脈バイパス術を行った。しかし吻合しても十分な血管径がえられなかった。また吻合部を確認したが十分に吻合口は確保されていた。このモデルでは慢性期に必要な冠動脈の血流を確保するのは困難と考えられた。現在、静脈グラフトから分枝した血管部位でのシーリング効果、および、摘出グラフトと摘出後周囲組織のリンパ系の変化に焦点をあてて評価することを開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
この新規のマイクロ波を用いたエネルギーデバイスは臨床現場において血管やリンパ管のシーリングにより止血や術後のリンパ瘻の減少など間接的に効果を認識することは可能であるが、病理学的評価や実際に血管内圧の上昇でどこまで脈管のシーリングを維持できるのかなどは不明な点がまだ多い。実臨床において、安全性を確認していく上でも動物種を変更して、既存のデバイスと異なる機序での血管の構成タンパクの熱変性によるシーリングの効果を検証していく。
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Causes of Carryover |
大掛かりな実験で、薬品の供給不足などもあり準備に時間を要した。次年度使用額が生じたが、引き続き本研究の消耗品購入に充てる。
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