2020 Fiscal Year Research-status Report
心機能回復のための心筋細胞における細胞極性因子aPKCの役割の解明
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19K09243
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河村 拓史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60839398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 愛 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (10838923)
秦 広樹 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (80638198) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞極性因子 / 心筋細胞 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、日本における心不全による年間死亡者数は4万人を超え、今後高齢化に伴いさらに心不全患者数は増加することが予測されている。心不全に対する標準治療として、病態に応じて薬物治療、外科治療が選択され、末期心不全に対しては、補助人工心臓、心臓移植が適応となるが、補助人工心臓の合併症、心臓移植のドナー不足や免疫抑制剤の副作用などの問題があり、これらを補完・代替する治療方法開発が望まれる。 末期心不全に対する新たな治療方法開発のための手がかりとして、臨床的に観察される補助人工心臓治療での自己心機能の回復(functional recovery)が挙げられる。この現象の報告は2000年代始めになされ、その後様々な研究が進められてきたが、未だunloadingとfunctional recoveryを結びつける分子メカニズムは解明されていない。 本研究において申請者らは、補助人工心臓治療でのunloadingによる自己心のfunctional recoveryについて、aPKC-c-Myc pathwayを中心とした分子メカニズムの解明を行うことを目的としている。本研究は、基礎研究としてこれまでに得られたaPKCの知見を、臨床的に観察され、新規治療法の開発に繋げることができる可能性のある事象の解明へと応用する研究であり、学術的独自性は大きく、その結果により新たな分野を開拓できる創造性を有するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、我々はin vitroでの①心筋細胞におけるunloadingとaPKC-c-Myc pathwayの関連性の解明を計画している。心臓における心筋組織に対する外的力学的作用として、心筋細胞に対するStretchとPressureの影響を検討するため、in vitroでのシステムを用いる。具体的には、Stretchに関してはストレッチチャンバーを用いた伸展刺激を行う。大量培養分化誘導システムにより作成した、ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞を用いる。 令和2年度はストレッチチャンバーにより培養した心筋細胞に対する伸展刺激の影響を検討した。ストレックス社のストレッチチャンバーシステムを利用し、まずストレッチチャンバーへの心筋細胞の接着培養の条件検討を行った。ヒトiPS細胞由来心筋細胞の培養においては、ゼラチンコーティングにより、細胞数105個/cm2程度の濃度で播種することで良好な接着が得られ、伸展刺激を行うことができることが明らかとなった。細胞形態的には心筋細胞は伸展刺激を行うことにより、配向性が認められるようになり、極性が認められるようになった。 さらに、aPKC-c-Myc pathwayを検討するために、伸展刺激を行った心筋細胞の免疫染色をおこなったところ、細胞核におけるpSer218 FoXOおよびc-Mycの増加を認めた。また、いったん伸展刺激を行った心筋細胞をde-stretchすることにより、心筋細胞の細胞質内でリン酸化(活性化)aPKCの増加、pSer218 FoXOおよびc-Mycのさらなる増加を認め、阻害剤ATMにより抑えられることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに確率した心筋細胞の伸展刺激により、より詳細な解析を行う予定としている。具体的には、aPKC-c-Myc pathwayの中間にあるmiR-34a発現の増減を検討することや、活性化aPKCの細胞内での局在等を免疫染色により検討することを予定している。また、aPKCの阻害剤であるATMを添加することで、伸展刺激によるaPKC-c-Myc pathwayの阻害が可能かの検討も行う予定としている。 さらに、より心筋組織そのものの伸展刺激にたいする応答を検討する目的で、培養した心筋細胞を重層化することで心筋組織体を作成し、伸展刺激を行うことも検討している。心筋組織体の機械的刺激により、よりin vivoに近い環境で検討することが可能であると考えている。 また、COVID-19の影響により、新規の動物実験施行が困難である状況から、主に臨床検体を用いた組織学的な検討を中心に行う必要があると考えている。すなわち、LVAD植込手術時、心臓移植時の心臓組織を比較検討する事で心不全心のunloadingに関する検討が可能と考えている。aPKC関連のタンパク質として、aPKC, pSer218FoXO, c-Mycの免疫染色、RNA抽出からのmiR-34aの解析を行い、aPKC-cMyc pathwayの亢進による心不全心のfunctional recoveryの解析を行う予定としている。
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Causes of Carryover |
現状で、本研究についてはCOVID-19の影響により、当初予定していた動物実験の施行が困難な状況であり、検討するモデルの変更を余儀なくされている。In vitroにおける心筋細胞の伸展刺激のモデルは確立されているが、よりin vivoに近い環境を再現する目的で心筋組織体の構築と、心筋組織体に対する伸展刺激を行うことも検討している。また、臨床検体の詳細な解析を加える目的で、LVAD前後での心筋組織の検討も行う予定としている。そのため、今年度予定していた金額を来年度に繰越し、使用する必要があると考えている。
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