2019 Fiscal Year Research-status Report
クラリスロマイシンとモンテルカストによる大動脈瘤治療と閉塞性肺疾患との逆説解明
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19K09265
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
碓氷 章彦 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30283443)
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (70718311)
内田 亘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90770868)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / 大動脈解離 / クラリスロマイシン / モンテルカスト / 慢性閉塞性肺疾患 / マクロファージ / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
小径大動脈瘤や大動脈瘤手術後の残存病変、慢性期B型大動脈解離(B型解離)などに対しては血圧コントロールを中心とした保存的治療法が施行されているが、積極的な予防治療法は確立されていない。我々は、先行研究で抗生剤のクラリスロマイシン(CAM)およびロイコトリエン阻害薬のモンテルカスト(Mont)が、それぞれ動物実験において抗炎症作用を介し大動脈瘤発症・瘤径拡大を抑制することを明らかにした。一方、CAMとMontは慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対してしばしば使われる治療薬であるが、COPDは大動脈瘤の罹患率、破裂や死亡のリスクファクターであることが知られている。本研究では、CAMとMontに対する、大動脈瘤予防効果とCOPDの大動脈瘤促進効果のパラドックスを解明するため、動物実験でCAMとMont両剤併用が大動脈瘤に対しどのように作用するかを、病態生理を含め明らかにする。さらに、臨床研究でレトロスペクティブに単剤あるいは両剤を長期投与されたCOPD患者を追跡し、大動脈瘤・慢性B型解離に対する薬剤の拡大抑制効果を検討する。 本年度では、細胞レベルにおいてCAM, Montがどのような作用を及ぼすを調べるため、我々は、in vitroにて炎症性マクロファージの培養培地にCAMまたはMontの単剤または両剤を添加した時の遺伝子発現変化を調べた。control群としてどちらも添加しないマクロファージを用いた。添加して12時間後にRNAを抽出し定量RT-PCRを行った。MCP-1, TNF-α, MMP-9遺伝子発現では、単剤、両剤で差は見られなかったが、IL-1β遺伝子発現量は、control群 0.82 ± 0.13、CAM群 0.76 ± 0.31、Mont群 0.65 ± 0.07、CAM+Mont群 0.54 ± 0.25 となり、単剤よりも両剤添加で発現量低下傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、大動脈瘤モデルマウスを用いたin vivo実験を行う予定だったが、事前に細胞レベルで効果差があるかどうかを明らかにする必要があると考え、本年度はin vitroで事前検討を主体に行ったため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでの事前検討で、単剤よりも両剤で炎症を抑制する可能性が示唆されたことから、当初計画である、大動脈瘤モデルマウスを用いたin vivo検討を予定通りに進める。すなわち、大動脈瘤モデルに CAMとMontを経口投与し、瘤径拡大・瘤破裂を抑制できるかを検討する。 効果が得られなかった場合は、投与濃度や評価時期・項目を見直し再検討する。また、大動脈解離モデルでの両剤服用時の有用性評価も行う。
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Causes of Carryover |
in vitroでの事前検討で試験試薬等の物品費を使用したが、当初の計画より遅れたため、物品費(手術器具、動物購入費)やその他(動物施設使用費)を使用しなかった。また、予定していた旅費を使用しなかったため、次年度使用額に差が生じた。 次年度ではin vivo検討を遂行するため、上述した物品費やその他で使用する。また、成果発表のための旅費として使用する。
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