2019 Fiscal Year Research-status Report
妊娠が神経障害性疼痛を抑制する新しい機序の解明;GABAの動態に注目して
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19K09365
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小野寺 美子 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50516953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 浩嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (00550641)
神田 恵 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50516820)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、健康寿命を延ばすために難治性の神経障害性疼痛への対応が社会的に求められている。我々は、妊娠が痛み閾値を上昇させることに着目し、さまざまな痛みと同様に神経障害性疼痛も分娩直前に抑制されることを明らかにした。またその機序に脊髄後角が大きく関わり、活性化したグリア細胞を抑制することが重要であることも示している。さらに脊髄後角において活性酸素の産生の主座であるミトコンドリアの分裂を触媒するDrp1(dynamic-related protein 1)が神経障害性疼痛時には増加しているが、分娩直前にはその増加が抑制されると言うことを明らかにした。 今回我々は神経障害性疼痛時に脊髄で減弱されることが明らかであるγ-アミノ酪酸(GABA)抑制系に着目している。まず、妊娠ラットを作成し、神経障害性疼痛モデルを作成するために手術を施行する。分娩直前のラットの脊髄をサンプルとしてウエスタンブロットによるタンパク量の研究を進めている。GABAの増減に関わる因子としてはグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の2つのアイソフォーム(GAD65とGAD67)を考えており、GAD67については神経障害性疼痛時に減少し、分娩直前にその減少が抑制されることが分かっている。今回の研究ではより神経終末部に豊富に存在するGAD65についても研究を進めている。また、活性化ミクログリアから分泌され、アロディニアの形成に重要であるBDNFについての検討も追加しているところである。 今後その詳細を明らかにすることにより神経障害性疼痛の新たな治療法につながっていくと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の段階では一年かけて、GABAの免疫染色に取り掛かる予定であったが、最適抗体の模索、また最適抗体濃度の調整などに時間が掛かり、そこまで到達することはできなかった。 しかし、ウエスタンブロットによるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の2つのアイソフォーム(GAD65とGAD67)の検討は当初の予定よりも先行して進んでいる。GAD67については予備実験の結果をさらに詳細に検討しながら、より神経終末部に豊富に存在するGAD65についての最適条件を模索しているところである。これらの条件が整った後、活性化ミクログリアから分泌され、アロディニアの形成に重要であるBDNFについてウエスタンブロットの施行を予定し、準備を進めているところである。 妊娠ラットの作成、神経障害性疼痛モデルの作成、行動学的な評価といった部分では、計画の通りの結果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず現在行っているウエスタンブロットによるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の2つのアイソフォーム(GAD65とGAD67)についての検討を継続して施行し、結果を確固たるものにしていく。その後BDNFについてウエスタンブロットの至適条件を検討し結果を出していく。 免疫染色については条件を設定し、様々な試薬などで検討を行っているところなので継続して行っていく予定である。 さらに今後の研究に必要となるくも膜下腔へのPE-10カテーテル留置の手技を確立しビククリン(GABA-A受容体拮抗薬)及びCGP35348(GABA-B受容体拮抗薬)の投与を行うことができるように検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
おおむね予定と同金額の支出となったが細かい部分で予算と実際額に差異が生じ、1年間で約8000円という残高が生じた。第二年度に使用予定である。第二年度は第一年度のウエスタンブロットに加え免疫染色および頚髄付近へのPE10カテーテル挿入を行っていく。そのため新たな試薬、物品が必要となるので第二年度の予算と繰越金を使用していく予定である。また実験動物についても追加で購入し再度モデルを作成する必要があるためこちらの費用も計上していく。
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